第一章・第一話 その3「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ~、ヒマやなぁ~2008-04-15 Tue 13:44
「えぇ~、
煎茶百。玉露五十。お抹茶が二十に、お番茶五百。ほんでグリーンティが百...。 ふーーーん...? ミヤコおばちゃん、これのどこがどうイタズラやて言いますにゃ?」 と、先程の注文書を見て不思議そうに首をかしげてみせる輝斗。 「はぁ~。ウチかて最初はそう思いましたんやけど...。 そやけどその書いたぁ~る数量のあとの単位! ヨウみとくなはいな。」 ミヤコは、ちょっと不服そうな顔をして、もう一度念を押すように言いました。 「んあぁ~? ん? んぁ~? 『t』て書いたぁーんなぁ。 ティー?『t』てなんや!」 「へぇ...。いつもの注文やったら『g(グラム)』どっしゃろ? ま、なんぼ多ても『kg(キロ)』どすなぁ。 ...そやけど『t』ゆーたら『トン』の事と、ちがいまっしゃろか?」 「トン...? トンかいな?」 「へぇ・・・。千キロ単位の『トン』 」 『確かに...。』と疑問に思った彼は、決して大きいとはいえない目を皿のように見開いて、もう一度その注文書を、それこそ穴があくほどじっくりと見たのでした。 いやはや、この注文書の『t』という単位が正しいのであれば、二條園創業三百余年はじまって以来の大量注文です。しかし、普段は多少の卸業をしているとはいいましても、あくまで小売り中心の商いですので、そんな山のような在庫など持ち合わせているわけがありません。はてさて困ったものです。 しかし、一体誰がそんな莫大な量のお茶を注文して来たのでしょうか? 考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく二人でありました。 「え~、発注元は...『ジョニーK/フロム・イーストコースト』?...。 なんじゃこら? 聞いた事あらへんなぁ?...。 ま、そやけど、いっぺん先方さんには連絡入れといたほうがヨサソやな。なんしか数の確認だけでもしとかんと、こっちカテ動きよーがあらへんサカイなぁ。」 そう言いながら、京都の電気街である『寺町通り』の電話ショップで先日購入してきたばかりの、自慢の「パノラマティック・扇フォン」を手に取り、ワンタッチ液晶扇面を開いて注文書の相手先番号を入力しました。これは、油小路通りに居を構える、十一代目・遠藤新兵衛氏が考案し、世界のグッディーデザイン金賞に輝いた空前のヒット商品でありました。 「え~。ピッポッパッ で パッピップッペッピッ っと...」 とりあえずイタズラでも何でも良いから、発注元にコンタクトを取ってみようと考えたようでした。このあたりは彼のポリシーで『実際に、しゃべってみんとわからへん』という自身の経験に基づいているようです。また、仮に単位が『kg』や『g』の間違いであったとしても、暇を持て余していたこの時期に、新規の注文は、結構有り難いと思ったのでしょう。 スポンサーサイト
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この記事のコメント関東語のコメントは、いらん思うてます。関東人はあほやおへんさかい、解説は無用どす。京ことばで完結しておくれやっしゃ。ほな、応援しているさかい、おきばりやっしゃ。
2008-04-17 Thu 22:53 | URL | 渋谷区民 #-[ 編集]
コメントならびに、CDもお買い上げ頂いているとの事、おおきにありがとうございます。
小説では、標準語解説は基本的にナシで考えております。 今後ともよろしゅうおたのもーします!
2008-04-18 Fri 19:04 | URL | ななちゃんズ #-[ 編集]
「もっともっと京ことば」のファンになって1年半、このSF小説の存在を知ってこちらの方にものめり込んでます。
やっぱりね。“秋の号”で京太郎がミヒルちゃんの名前を聞いて顔を赤らめてましたよね。それを目聡く見つけた由緒正しき猫ちゃんが“青春だにゃん”か何か言ってました。それと、輝斗の顔からミヒルちゃんの面影が読み取れますよね。その推測がSFで丁寧に語られた感じで、我が家で“ウケテ”ます。
2008-11-11 Tue 10:10 | URL | なんどりあんの常連 #xFx1/FKc[ 編集]
なんどりあんの常連さんe
コメント頂きまして、ありがとうございます。 秋の巻のマンガで、そこまで読み取って頂いていたのですね(嬉) おおきにありがとうございます! 今後ともどうぞよろしゅーお願い致します。
2008-11-11 Tue 18:26 | URL | ななちゃんズ #-[ 編集]
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