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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第九話 その1「宇宙船クルー面接の朝」表にたんとの人、待っといやすえ

 翌朝、輝斗はハシリ(台所の流し台)から聞こえてくる都々の楽しそうな笑い声で目を覚ましました。時計を見るとすでに8時を少し過ぎていました。普段は弥生が7時前には起こしてくれるのですが、今朝は昨日の疲れを気遣ってか、そのまま起こさずにいたようです。
 あわてて作務衣に着替え、台所に向かうと、サロンエプロンをした村田くんと都々がハシリに立っていました。
 どうみても寸足らずの弥生のエプロンを着けた長身の村田くんの姿をみて、輝斗はプッとふきだしてしまいました。

「ぷっ? 村田くん。自分、何してんにゃ?」
「あ、船長。おはようございます!」
「あぁ、おはよう。都々もおはようさん。ほんで、何してんにゃな?」
「お兄ちゃんな、おみそ汁作ってくれたはんね。なー」
隣にいる都々が答えました。
「おみそ汁?て、村田くん、そんなモンまで出来んのかいな?」
「へぇ、奥さんのおてったいさしてもらお、思いまして。」
台所でお膳を拭いている弥生が、
「いやぁもー、さっきんおネギ切ってもーたらね、も~うびっくり。
あっちゅーまに切ってしまわはってねぇ」
「うんうん、すごかってん!。手品みたいやった~!」
都々はすっかり村田くんになついているようです。
「ついでにおみそ汁も作らしてもーてるんです。ボク、京都は白いお味噌やて頭ン中ではわかってるんですけど、白味噌のおみそ汁は初めてなんですわ」
と、嬉しそうにおタマの中の味噌をかき混ぜています。
 輝斗は、昨夜京子が『この子には私の記憶や経験がデータとして組み込まれてますのえ、ふふふ。』と言っていたのを思い出しました。

 美味しそうな匂いが立ちこめ、朝食の支度が出来た頃、表玄関の掃きそうじ(京都では朝に自宅の前の公道を掃除する『かど掃き』という習慣があります。)を終えたミヤコが、台所へ戻って来て
「輝ちゃん。もう表にたんとの人、待っといやすえ」
と言いました。
「んあっ? 今日はまたなんでしたんかいな。」
「輝ちゃん何言うといやすのん。面接ですやん、め・ん・せ・つ」
「ああぁ!そやったわ」
と、輝斗が店の玄関を見に行くと、ざっと見た限りでも200人程の人が集まっています。
「うわぁ~こらエライこっちゃ!」
昨日も『二條園デバー』飛来騒動で見物人が大勢ごったがえしておりましたが、今日の人達は、お行儀良くまっすぐ一列になって静かに並んでいます。

「こらアカン。今日は10時の予定やったけど、皆さんを待たすのんは気の毒なし、ちゃちゃっと食べて始めよか!、な!村田くん。
あれ?ワシのお箸どこやった?あれ...お箸どこや?」
とすっとんきょうな声を出しながら自分の箸箱を探し、お膳の上に置いてあるのを見つけ、手に取りました。
「ああ! こんなとこににあったわ...」
「きゃはは、お父ちゃんいつものとこにずっと置いたったのに...ふふっ」
都々の笑い声を聞きながら、
「ワシ、先ヨバレルで。いただきます!」
と慌てて朝食を食べ始めた輝斗でありました。
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この記事のコメント

夏の号の冊子でしたかね。
宇宙船内の輝斗がビーナス→なすびーとか言って、村田君の相槌からおじいさんに当たる建斗のことを回想している場面がありました。
子供ながら調理方法に注文つけたりしている輝斗が滑稽で可愛かったなあ。
建斗がひいきにしている「なんどりあん」にはモチーフとなった何らかの割烹などあるんだろうなあ、と想像しつつも、(千葉浦安舞浜在住の)私が京都に行く度に寄っているXX歌舞練場隣のYZZを「なんどりあんのモデル」と思い込むようにしています。
2009-01-27 Tue 12:24 | URL | なんどりあんの常連 #-[ 編集]

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