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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第八話 その5「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

 ふと何かを思い出したように真顔に戻った輝斗が、ボソッとつぶやきました。
「...。そやけど都々は寂しないやろか? なんしかまだ小さいサカイに」
 しばしの沈黙の後、ミヤコはうんうんとうなずき
「どっかで聞いたようなセリフやなぁ、と思たら、京太郎兄ちゃんも昔、今の輝ちゃんとおんなし事お言いやしたなぁ...。」
「...お父ちゃんが...。」
「ふん。えらい心配しゃはってなぁ...。家族、親戚はもちろん、ガッコのセンセにまで頼みに行かはったんえ。『輝斗のこと、よろしゅうたのんます』て...。
そやけどな輝ちゃん、都々ちゃんと弥生はんの事やったら、ウチにまかしとき。な!」
 いつもはやわらかい口調のミヤコが、めずらしくきっぱり力強く言い切りました。驚いた輝斗は嬉しそうな顔をして、
「おおきに、おばちゃん...。おばちゃんにそーゆーてもろたら、心強いわ。ホンマおおきに」
「何ゆーてんの?。せーだい、おきばりやす」

 ミヤコの手を取り、頭をさげていた輝斗がぽつりとつぶやきました。
「なぁおばちゃん。ついでにもひとつ聞くけど、これからさきの人生て...。もう決められてしもてるんやろか?」
「...。さぁ...、どうなんやろねぇ。決められてはいいひんのやろけど...。なるようにしかならへんのとちゃいまっしゃろかねぇ。」
「なるようにしかならへん...。ま、そら、そやろけど」
「ふぅん。まぁ、ウチは、ぽーっと生きて来た気ぃもするけど、あーする、こーするゆーのんは、なんやしらんまに自分で決めてんにゃろねぇ。そやけど、それが吉と出たり、凶と出たり...。今までいろいろおしたしなぁ...。」
と言った後、過去を振り返っていたのかしばらく間を置いてから、話を続けました。

「ものすご大事な事がすぐに決められる時もあるし、しょーもない事がなかなか決められへん時もある。そうかとゆーて、なんとのう決まってしもてたゆー事もあるし。
なんや上手い事、よー説明出来ひんにゃけど、
最後は輝ちゃんの思うようにおしやしたらよろしのとちがいまっしゃろか?」
「ふぅ~ん...。」
「ぷっ。いや! 宇宙船の船長さんに向かってえらそうな事ゆーてしもて...。ふふっ。ごめんやっしゃ」
ミヤコは風呂上がりですでに上気させていた顔を、さらに赤くして照れくさそうでした。

 今のミヤコの言葉を聞いて、輝斗はさきほど京太郎が言っていた『お前の思うようにしたらエエ』というセリフを頭の中で思い出し、『そや、何も強制された訳やない、ワシが決めたらええんや!』と考えるようになりました。
するとずいぶん気が楽になったようです。どうやら、いつもの前向きの姿勢を取り戻したのでしょう。

「いや、おおきにおばちゃん。おばちゃんのゆー通りや。
ワシ、なんや、ひねくれて変な風に考えてたんかもしれん。」
「そら、今日は、普段めったにあらへん事が立て続けに起こったんやさかい、しょがおへん。
さ、ホナ明日もあることやし、そろそろ寝まひょか? おやすみやす。」
「へぇ、おやすみやす...。」

 輝斗は階段を降りながら、『未来の映像なんか見せられたら気持ちがニブリよんな、これからはあんなモンは見ん事にしよ。うん、その方がエエ。』と、考え、自分を巻き込んでいるこの大きな流れに、身をまかせてみようと固く決意したのでした。
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