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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第八話 その2「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

「いえいえ、ボク布団はいらしまへんね。
椅子かなんか貸してもうたら、そこで休ましてもらいますし」
と、丁寧に断りました。
「何、遠慮してんにゃな、ちゃんと布団で寝なあかんで」
と、輝斗が言っても
「いえ、僕ホンマ、大丈夫なんですわ」
と、柔らかく返す村田くん。このあたりの丁寧な遠慮の仕方は、生粋の京女である二條京子のプログラムが影響しているのです。アンドロイドである彼は布団に横たわって寝る必要などないのですが、そんな事情を知らない輝斗は、
「アカンアカン。何言うてるんや」
と一歩も引きません。
「いえいえ、ボクなんかにそないに気ぃつこてもらうのは気の毒です。もったいない事ですわ」
「なんにも、もったいない事あらへんて。遠慮したらアカンで」
 
 酔っぱらいの押し問答みたいな二人の会話に気付いたタクシーの運転手さんが割って入りました。
「ところでそちらのお兄さん。スポーツかなんか、したはりますのんか?」
不思議に思った輝斗が
「ハァ?...なんでそんな事聞かはりますねン?」
と、聞き返すと、
「いや~、そっちのお兄さんの方だけ、車体がエライ沈んでまっしゃろ?『おすもうさん』が乗らはった時みたいですわ。そやけど見た感じはスラーッとしたはるし...。体でも鍛えたはんのやろか?思いましてな」

そう言われてみれば確かに村田くんが座っている車の右側だけが極端にローダウンした状態で走行していたのです。驚いた輝斗が
「村田くん、自分、体重何キロあんにゃ」
と尋ねると
「体重ですか?へへっ、ボク、こー見えて、120キロほどありますねん」
と恥ずかしそうに答えました。
「120キロォ~?」
輝斗とタクシードライバーは大声を上げました。

身長は182cmとかなり高いのですが、もしスポーツ選手であったとしても『高跳び』や『棒高跳び』に違い無いと推測されそうな細身の体型は、どう見ても、せいぜい70キロくらいにしか見えません。

「なんしか体の中に組み込まれてる部品が重たいみたいで...」
と、輝斗に耳打ちし、頭をポリポリかいている仕草は、ますますもって人間くさいアンドロイドの村田くんですが、中身はずいぶん人とは違うようです。

 ほどなくしてタクシーは二條園に着きました。この後に及んでも、まだ遠慮している村田くんを、輝斗は『エエさかい、二階へ上がれ』と怒ったフリまでして、二階の一番奥の部屋に連れて行きました。そこには二條家で一番上等の来客用布団がひと組、敷いてありました。
「今日からここが自分の部屋や。なんでも好きに使てくれたらかまへんしな。ほな、明日また起こしにくるサカイ、それまでゆっくり休みや。」
と輝斗は言い残し、階下へ降りて行きました。
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