第一章・第八話 その1「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし2008-11-11 Tue 18:18
「ええ~? インド?」
「ははは、エエやろ~。今からカナダ行って『ナイアガラの滝』見てくるし。」 子供が自慢話でもしているような、父の声でした。この時輝斗は『二條園デバー』を北インドのサヘート・マへート上空に停止させ、電話をかけてきていたのです。 しかし、父が『二條園デバー』で出発したのはたった今しがた。せいぜい10分か15分くらい前のことです。都々はまだ小学校一年生ですが、『インド』がおじいちゃん、おばあちゃんのいる『アメリカ』と同じように、遠い異国のことだという事は理解していました。 「え~お父ちゃんスコイわ~ ウチも連れて欲しかった~。」 「はははっ。都々は明日ガッコあるやろ? また今度、休みのヒムに、ゆっくりつれたるサカイに...。」 「ホンマ? 約束してや」 「よっしゃ、約束しよー。 お父ちゃんも、ジキ帰るさかい、都々は寝とくんやで」 「うん、わかった。......うん。......うんうん、わかった。お母ちゃんにゆーとく」 「あっ。もしもし...お父ちゃん?もしもし?。もぉ~、カナンなぁ~。」 自分の言いたい事だけを話して電話を切ってしまった父に、ちょっとあきれ顔の都々でしたが、受話器を置くと弥生の元へ駆け寄りました。 「お母ちゃん。お父ちゃん、村田くんの布団用意しといてて、ゆーたはった!」 宇宙空間では超光速での走行が可能だという『二條園デバー』は、地球上でも光速に近いスピードで、自由自在に世界中の空を一瞬で飛び抜けることができる『ハーモナイズ・ダイナモ』とよばれる動力が使用されており、抵抗も揺れもほとんど感じる事の無い、この上なく快適な乗り物でした。 京都からインドのサへート・マへート、アメリカのニューヨーク、カナダのトロント、最後にアラスカのフェアバンクスに立ち寄り京都に戻るという、ナイトクルージングを楽しんだ輝斗と村田くんでしたが、その所要時間はわずか一時間足らずの事でした。 京都市内中心部にある『二條園』から出発した二人でしたが、帰りは京都の東山にある『東野宇宙開発研究所京都出張所』(通称『将軍塚宇宙センター』)内に『二條園デバー』を停泊させました。 同センターは、出発までの今後しばらくの期間、彼らのホームとなります。 センターから「三つ葉マークのタクシー」に乗り、二條園への帰路についた二人は、車中で 「村田くん、今日はホンマおおきに。ものすごおもろかったわ。」 「そら良かったです」 「なんちゅーても、あのマンハッタンの夜景は一生忘れられへんで~」 「へぇ、そやけど、最後に行った北極のオーロラも迫力ありましたね」 「そやな。あれも綺麗やったなぁ...。 ああそや。ウチ帰ったら、布団用意してっさかいに、今日はゆっくり休んでや」 スポンサーサイト
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