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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第七話 その2「え?しらんかったん?」 ニューヨークまでじきどっせ

 ミヒルは孫、都々のまんまるした目を見つめ、
「そうえ~。積もるまで降るゆー事はそうそうあらへんかったけどな。比叡おろしが吹いて寒い日ぃにはな、真っ白い雪がよう降って...、そらぁ綺麗なもんやったんえ~。」
とやさしく言いました。
「ふ~ん。比叡おろして何?」
「ん? 比叡おろしゆーたらなぁ。比叡山から吹くちべたーい風のことや。比叡おろしが吹いたら、そらさぶかったんえ。」
「ウチ、雪、見た事ないねん。ウチも雪のつもった金閣寺、いっぺん見てみたぁ~いぃ!」
と、都々がダダをこねたように言うと、武士会長が
「そうそう、ミヤコちゃんも『ウチも雪のつもった金閣寺、いっぺん見てみたぁ~いぃ!』といって聞かなかったんじゃよ。はははっ
それで仕方なく3人で初デートに行ったという訳じゃ」

 一同はなごやかな雰囲気の中、当時を振りかえりながら、会話をはずませていましたが、輝斗一人だけは求人広告を食い入るように見つめていました。
「年齢とか性別とか...。条件とか適正とか...。」
なんやらブツブツつぶやいていたかと思うと、おもむろに求人広告から顔を上げ、横に座っている京太郎に聞きました。
「なぁお父ちゃん、この『宇宙船内での軽作業』て、何すんにゃ?」
「んぁ?お茶のな、袋詰めやらなんやら、ま、雑務一般や」
「ふ~ん。ほな『時たま販売』ちゅーのは?」
「配達先の惑星で、直売会があった時のためや」
「配達先の惑星で直売会て...。卸すだけやのーて、そんなんまでせんならんのかいな?」
「さぁ?...。どやろなぁ...。」
と、はぐらかすような返事です。

 どうやらこれから起こる事態を詳しく話してくれそうにはありませんでした。もしかしたら、例の未来からの映像に『そういうシーンがあったのかもしれへんな。』と考えた輝斗は、質問を続けます。

「ほな、『簡単なロボット操縦者』て...。これどんなロボットなんや?」
「ふっふっふっ。ま、ゆーたら作業用ロボットや。誰でも簡単に動かせるように出来たんねん」
「ふ~ん?...。それフォークリフトみたいなモンか?」
「フォークリフトなぁ...はっはぁ~、ウマい事ゆーたモンや。そうそう、ゆーたらそんなトコや...。ま、ワシが設計したんやけどな、これがまた結構イカツイのもあんねン、実物は来週にでも見にきたらエエ」
「ははは。イカついフォークリフトか...。へぇ~なんやおもろそうやなぁ。お父ちゃん、むかしっからプラモデルやら好きやったもんなぁ~」
「はははっ、お前ヨー知ってるやんケ...。」
とうれしそうに笑った後、急に真剣な表情で、輝斗の目をまっすぐに見て続けました。
「...輝斗。宇宙船に関するモンは、なんしかお前の為に作ったようなもんなんや。」
「え?...ワシのため...?」
と、またしても何の事か理解できない輝斗に
「なんでもお前の思うようにしたらエエ...」
今度はうつ向いた京太郎が、照れくさそうに言ったのでした。

 輝斗は『...。ホンマにそんなんでエエんかいな...』といぶかしんだのですが、子供の頃、一緒にプラモデルを組み立ててくれた若い父の姿からは想像もつかない年老いた姿を前に、口に出す事はしませんでした。
そんな輝斗の思いを知ってか知らずか、京太郎はうつ向いたまま、
「お前の思うようにしたらエエ、ちゅーこっちゃ」
ともう一度くり返したのでした。
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