第一章・第六話 その1「君も宇宙船で働いてみないか」て?2008-09-16 Tue 19:02
2077年のこの時代、世界に流通しているロボットといえば『おそうじロボット』や『お料理ロボット』『ペットロボット』などでした。やぶらかぼうにアンドロイドといわれても...、と輝斗はいぶかしんでいたのですが、そんな彼の表情などまったく気にもかけずに京太郎は続けます。
「アンドロイドの村田くんや」 「アンドロイドの村田くん?」 「そ、皆『アンドロイドの村田くん』て、呼んでんねん。 こないな高性能のアンドロイドを作れるトコはアメリカにもあらへんかったしなぁ~。無理言うて京都の『村田さん』に、お願したんや!」 「...は?ほんで『アンドロイドの村田くん』」 「そ、『アンドロイドの村田くん』...」 輝斗は、『そんな単純なネーミングでエエにゃろか?』と、あきれると同時に、よくよく村田くんを観察してみましたが、皮膚下の血管の透け具合や、ホクロ、ソバカスまであり、人間そのものといった仕上がりです。 しかし、人であれば、誰しも一つや二つはあるであろう「かさぶた」や「傷跡」といったものがまったく見当たらないのでした。 先程感じていた『気配がない』というのは、なるほどその辺りに理由があったのかもしれないな...と、ひとり納得している様子です。 『ほんで、この村田くんは、いったい何のために造られたんやろ?』と、輝斗が考えていると、すぐさま当の村田くんが輝斗の心中を察したかのように 「船長! 僕は、パイロットです。」 と言いました。 「え?」 人の心が読めるのかと驚いている輝斗に、叔母の京子が 「ふふふ。よーできた子どっしゃろ?この子の『人口頭脳』っちゅーのん?私の記憶やら思考回路やらもデータとして組み込まれてますのえ、ふふふ。 ウチの息子みたいなモンどすわ...」 京子は、まるで我が子を見つめる母のような眼差しでアンドロイドの村田くんを見つめていたのでした。 そこへ、表の木戸がカラカラカラと開き、白い帽子をかぶった男性が顔をのぞかせました。近所の仕出し屋さんでした。 「おおきに、えらい遅なりましてすんません。 お料理、運ばしてもろてもかましまへんか?」 「おおきにおおきに。こちらこそご無理ゆーてすんまへんどしたなぁ。ホナ、奥にお願いします。」 仕出し屋さんが奥の間に料理を運び入れ、ミヤコ、京子、ミヒルの三人も手伝い、お膳を組み立てて、その上に料理を手際良く並べていきます。お祝いの席らしく、先ほど買ってきた赤飯もちょこっとずつ添えられました。 支度が整うまで、会長と京太郎、輝斗、村田くんの男性陣が店の間で話を続けていると、再び木戸がカラカラカラと開きました。 スポンサーサイト
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