第一章・第五話 その2「宇宙船でお茶の配達?」 はぁ~??????2008-08-19 Tue 17:08
輝斗には武士会長の言っていることがまったく理解できませんでした。
2077年のこの時代、地球の周りを取り囲むように数々の『宇宙ステーション』が建設され、『太陽系』の近隣の星々への行き来はされるようにはなっておりましたが、『銀河系』へは、未だ誰一人として到達していないのは広く知られている周知の事実、小学生でも知っている事でした。 武士会長の話は、世間一般の常識の範疇をはるかに超えていたのです。 口を開けたまま、ぴくりとも動かない輝斗を見て、京太郎が 「はははっ、輝斗がなんのこっちゃわからんのもしょがあらへん。 ホナちょっと村田くん。『ホロ・プロ』で、例のプレゼン流したって」 「はい、ドクトル二條」 『はぁ?「ドクトル二條」て、お父ちゃんの事かいな? またタイソな名前つけてもうて...。』 と、輝斗が内心あきれていたその横で、村田くんは右の懐から、タバコのボックスサイズの銀色の箱を取り出しスイッチを押しました。 すると、その箱からひと筋の光がゆっくりと立ちのぼり、光の先が二條園の天井に届いた瞬間に四方に広がり、立方体を形作りました。言ってみれば、3m四方くらいのキラキラした光の箱が突如として店の中に現れたのです。このシステムは、『3Dホログラムプロジェクター』のプロトタイプで、市場にはまだ出回っていませんでした。 そして、その立方体のスクリーンの中央に、モノクロの球体が浮かび上がった瞬間、輝斗の口から『ほぉ!』というため息がもれました。その鮮やかな3D映像は、輝斗にとってかなり新鮮に思えたようです。 次に何が映し出されるのかと彼が期待をふくらませて見ていると、その球体に数字の1が浮かんできました。それはまるで大昔のハリウッド映画で流れるイントロダクションが立体になったようなもので、まもなく1・2・3・4と順に数字が映し出され、カウントが始まったのですが、最新鋭のマシンにしては、それはもう何とも古風なものでした。 ♪ひー・ふー・みー・よー ピーーーーーー 球体がゆっくりと半透明になり消えたかと思うと今度は軽快なサウンドロゴと共に、ニューヨークの研究所とおぼしき建物と、金髪のアナウンサーが現れ、英語でリポートし始めました。アナウンサーの音声のうえに後から日本語の解説が、音量を大きくしてアフレコされていました...。 「こちらは、『東乃宇宙開発研究所』です。ここでは、1977年の設立以来、宇宙開拓時代に先駆け、人類のための宇宙生活におけるあらゆる研究が行われてまいりました。ところが2020年のある日、『宇宙からメッセージ』が届いたのです。これがその映像です。」 アナウンサーと研究所建物の3D映像から、当時宇宙から届いたという粗い粒子の平面映像に切り替わりました。 その発信者は、何かの乗り物の中にいるようでしたが、始めの方の映像では画像の状態が悪く、顔がはっきりとは見えませんでした。やがて画像が徐々に鮮明に映しだされると、その作務衣のような濃紺の宇宙服を身に付け、何か重要な報告をしている様子の青年が、今輝斗の隣にいる村田くんである事がわかりました。 スポンサーサイト
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