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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第四話 その5「家族、そして村田くん」 みな、おかえりやす!

 父との別れの日、自分の頭をくしゃくしゃにしながら『あんまし帰ってこれへん』と言った父。その日をさかいに13年間、たったの一度も帰って来れなかった父。

 そんな父のことを不憫に思い続けながらも、自分が一人前の大人として、店をまかされるようになるまで一緒にいてくれた母に、改めて感謝の念をおぼえましたが、父の元に行こうとするのには反対でした。

「 .....。まぁ、そうは言うても...。お母ちゃんカテ、いっぺん入ったら出てこれへんかもしれへんにゃで...。もう会えんよーになるかもしれんにゃで」
「そんな事あらへん、お母ちゃんは仕事で行く訳やないし、大丈夫や思う。月にいっぺんは無理かもしれへんけど、半年に一回位は帰って来れるて...。」

 どちらも譲らず、しばらく押し問答を続けた後、二人はだまりこくってしまいました。
 母のこれからの人生は母自身が決める事だという事は理解していましたが、輝斗が心配しているのは、母自身のことでした。京の自然、京の四季、京の風情 ... 。誰よりも京のまちを深く愛している母が、このまちを離れては暮らしていけない...、そういう母を輝斗はよくわかっていたからです。
 
 しかし、輝斗の説得もむなしく、その一ヶ月後
「ミヤコちゃん。輝斗の事...、よろしゅう頼みますわな。」
 ミヒルはミヤコにむかって深くひざにつきそうになるほど頭を下げ、『東乃宇宙開発研究所』のあるニューヨークへと出発してしまったのでした。
 今から思えば、母のあのキッパリとした態度は、近い内にまたすぐ会えると本当に信じ切っていたのかもしれません。

 その母との別れから早や四半世紀もの月日を経た今日、ようやく再会する事が出来たふたりとの別れを思い出していた輝斗は、二條園の店の入口から何やら人の話し声が聞こえてくるのに気付き、『なんやろ?』と表の木戸を振り返りました。

カラカラカラ...と扉が開き、
「ただいま~~~」
と、和装をした上品な老婦人が入って来ました。
輝斗がきょとんとしていると、
「輝ちゃん、京子おばちゃんも、来ゃはったえ」
と、母ミヒルの声。

「え? 京子おばちゃんて...。
アメリカにお嫁に行かはった京子おばちゃん?」
 輝斗が生まれる前に、東乃家に嫁いだ叔母・京子の久しぶりの里帰りでした。続いて立派な老紳士も入って来ました。

「皆さんこんばんは~。
イヤー、やっぱり京子の実家はいつ来てもイイね~
はぁ~ホッコリした。」
老婦人が京子であるならば、この優しそうな老紳士が『東乃グループ』総帥、武士会長に違いないでしょう。

「ってことは...、武士のおっちゃん???? 
うわ~おっちゃんもおばちゃんも...。子供ん時から、みなから話はよーよー伺ってましたけど、いやぁ~はじめまして...」
と、輝斗が目を輝かせたその時、

「こんばんは~、夜分に失礼しますぅ」
と、もう一人、そら恐ろしくなる程に均整のとれた美しい青年が入ってきました。
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