京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第四話 その4「家族、そして村田くん」 みな、おかえりやす!

 宇宙開発研究所にいる京太郎に連絡を取る方法はただひとつ。
 研究所宛に電子メールを送信すれば、ウイルスチェック・暗号解読等の検閲のため時間はかかるものの、宛先本人に手渡されるシステムがありました。しかし、京太郎からの返信は出来ないため、一方通行ではありますが、それしか手段がないのですからしょうがありません。

 京太郎の赴任したニューヨーク本部で進行中の開発内容は、確かに企業秘密どころか、国家機密と言ってもいい程の大掛かりなものでした。開発リーダーという立場にある京太郎は、家族との会話すら持てない状況を仕方がないと思う反面、やはりひどく寂しいもので、寂しさを紛らわすかのように研究開発に没頭していきました。

 ミヒルも『二條園』の女将となり、忙しい日々を送っていましたが、定休日には必ず家族の近況を報せていました。

 そのミヒルが夫のもとへ旅立つ決心をしたのは、それから13年もの月日を経たある日。輝斗の成人式の様子のメールを、研究所宛に送信した直後の事でした。

 輝斗はといえば、二十歳を迎えたのを機に、店の経営をまかされたばかりでした。
その日は週に一度の休日で、居間で寝転びながらTVを見ていました。
「輝ちゃん...。ちょっと今かまへんか?」
 母はいつもと違う真剣な顔つきで居間に現れました。

「なんや?お母ちゃん。そないコワイ顔して...。」
「ん、そうか? そんな事あらへんえ。
 .....あんな輝ちゃん。お母ちゃんなぁ....。」
「なんやな、なんか言いにくい事か?わしのやり方がおかしいんやったらなんでも直すさかい」
「ふぅ~ん。あんな、お母ちゃんな、お父ちゃんトコ行こかなぁ思て。」
「 ........。ヘ?」
 輝斗は母の表情から、何か店の事で文句を言われるのにちがいないと思い込んでいました。
「あんたが成人するまでは...と、ずっと思てたんやけどな、お店のこともあるし、なかなか決心がつかなんだんやけど....。」
「.....。ほんで?」
「ふぅ~ん。お店のほうは、ミヤコおばちゃんも、てったうサカイ大丈夫やて言うてくれたはるし、
あんたも二十歳になって立派にお店の主人としてやってくれてるし....。」
「ふ.....ん....。」

 輝斗にとってこの13年間は、父のいない寂しさに加え、曾祖父・曾祖母・祖父・祖母と、4人もの家族との死別を経験したつらい年月でした。
 輝斗はお別れの儀式にすら、ただの一度も帰って来なかった父に、すでにあきらめのような感情を抱いており、『お母ちゃんは、いまさら何を言うてんにゃ?』と思っていたようです。ただ、そんな彼の心中を察したかのように母は言葉を続けます。

「お父ちゃんはなぁ...、おじいちゃんやら、みなのお葬式にいっぺんも帰ってこられへんかったやろ?そら、どんなに辛い思いしたはるか...。
あんたは小さかったし、覚えてへんやろけどな。
ニューヨークに行かはる前もな、あんたの運動会見に行けへんよーになったゆーて、ものすご悔しがらはってなぁ...。たっかいたっかいカメラこーてきて『これで輝斗を撮ったってな』て、おじいちゃんに頼んだはったんえ...。
成人式もどんだけ見たかったことやろ...て思たら、不憫でなぁ...。
お母ちゃん、なんかあるたんびに、いっつもその事ばっかり考えてたんえ。」
 ミヒルは十数年あまりも家族やお店をほったらかしにして研究生活を送っている京太郎のことを、恨みに思ったのは一度や二度ではありませんでしたが、夫・京太郎こそ、独り寂しい思いをしているのだと、長年に渡って考えていたようです。
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