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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第四話 その2「家族、そして村田くん」 みな、おかえりやす!

「京太郎~。セッショーや。わしの輝斗だけは、輝斗だけは連れていかんといてくれ。な!」
と、会議の中で熱く懇願したのは、一家の祖父・二條建斗(62歳)でした。

 建斗には、4人の子供(京子・京太郎・京斗・ミヤコ)がおり、3人の孫に恵まれておりましたが、その中でも、特に輝斗の事を一番可愛がっているのは、誰の目から見ても明らかでした。
名付け親でもあり、唯一の内孫であったからでしょうか。どこへ行くのも一緒で、いろんな所に連れて歩いていたのです。他の孫たちから『おじいちゃんは、輝ちゃんばっかりエコヒイキしてずるい!』と、ブーイングが起こる事もしばしばありました。
 
 そんな時には決まって「うははははっ。そうか?そんな事あらへんで。なぁ、輝斗」と、大声で笑いながら輝斗の頭をくしゃくしゃに撫でる始末ですから、文句をつけた子供達はさらにふくれっつらになりました。そんな夫を困ったものだと祖母の寿々江(62歳)はだまって苦笑いを浮かべて見つめていました。
 輝斗も自分が特別に可愛がってもらっている事はよくわかっており、ふだんから留守がちな父・京太郎よりも、祖父・建斗の方になついていたのです。

「そんなことゆーたカテお父ちゃん。わしニューヨークに行ってしもたら、そうそう帰ってはこれへんねんで」
「そやから輝斗は連れていかんといてくれっちゅーてんのや。ガッコもやっとこさ慣れてきたトコやないか。」
「ほたら誰が輝斗の面倒を見んのんや。」
「そらミヒルちゃんが見てくれるがな。」
「. . .へ. . .?」
 妻のミヒルと輝斗の二人を連れて行くつもりだった京太郎は言葉をなくしました。

「そやけど、ミヒル姉さんが行かへんかったら、京太郎兄ちゃん...」
とミヤコが助け舟を出そうとしたところに、それまでだまっていた寿々江が厳しい口調で断ち切りました。
「ミヤコ!あんたいつまでこの家にいるつもりやの?」

「そやねぇ、おばあちゃんもそろそろミヤコちゃんの花嫁姿をみたいわぁ、なぁおじいちゃん。」
と、一家の曾祖母ときわ(84歳)がつぶやくように言いました。
おじいちゃんと呼び掛けられた曾祖母のエリオット(86歳)は
「ミヤコちゃんの花嫁姿...。OH!そら死ぬまでに見てみたいなぁ」
と目をほそめてミヤコを見つめて言いました。今年27歳になったミヤコは、急に自分の結婚話に話題がふられたので、だまってうつむいてしまいました。

「なぁ京太郎。お母ちゃんカテこの歳やし、今はミヤコも店をてっとーてくれてるサカイええよーなもんの、いつどーなるこっちゃわからへんし...。
ウチもミヒルちゃんにいて欲しいね...。」

『二條園』は代々女将が切り盛りしてきた店でした。エリオットは歴史学者、建斗はパイロット、そして京太郎は科学技術者としてそれぞれ自由きままに外で働いてきましたが、長男の嫁であるミヒルは女将として家業を継いでもらわねばならないということです。
このままではミヒルに鉾先がむけられてしまうかもしれない、嫁としての責任を追求するような事態になるかもしれないと京太郎はだまってうつむいたまま考えておりました。

 家族8人が揃った奥の間には、しばし沈黙の時間が流れました。
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