京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第三話 その3「輝斗おかえり」て、どちらさんどす?

 一人は二條園の向いに住んでいる「吉野さん」。
 今どきめずらしく日本髪を結った老婦人で、ずいぶんふくよかな体格をしています。またその顔には、人の良さがにじみ出ているようです。
「えらいすんまへんなぁ。ここ、ちょっと空けとくれやすな」
と、言葉使いもていねいに、やわらかく優しい声で周りの人々に、協力を求めています。

 もう一人は、二條園のハス向いに住んでいる「染井さん」。
 こちらは相当のこだわりでもあるのか、身に付けている物全てが『紫色』にコーディネートされ、特にその「マむらさきの髪」がなんとも印象的な、ほっそりとした体形の老婦人です。なかなかにするどい眼光をメガネの奥から覗かせ、
「ほれ!ここの御主人通らはっサカイ、ちょっと道あけて! 
 ほれ、みな道あけとぉくれやっしゃ。ほれほれ!」
と、こちらは、まるでドラ猫のようなしゃがれた声で、有無を言わさないような迫力ある指揮をとっています。

 お互い見た目は対照的ですが、実は大の仲良しで近所の住人からは『おみきどっくり』と呼ばれています。二條園の『喫茶コーナー』に、ほぼ毎日お茶を飲みに来てはお喋りを楽しんでおり、二人と輝斗はお互いのことを何でも知っている間柄です。この二人の呼び掛けで、人込みはどよめきながらも、なんとか車が一台通るだけの隙間ができました。
 輝斗はその間を「おおきに、すんまへんなぁ」「エライすんまへんなぁ」と群衆にむかっていちいち声をかけながら、ゆっくりと自宅のガレージに進んで行きます。

『はぁ~、ナンギなこっちゃなぁ~』と、心の中でつぶやきながら。

 さて、上空のその物体に『お茶処・二條園』の文字があるからには、この騒ぎが、自分に関与しているという点については、まず疑いようがありません。
 本来ならその非常事態に、動揺しパニックになってしまうような状況でしょうが、その姿はいたって落ち着いているようでした。
 
 何があろうとも『慌てず、騒がず』。
 京の老舗に生まれ育った彼の取るべき行動がこの場面にも自然と出て来たのでしょう。普段と変わらないその態度を目にして、集まっている人々も決して騒ぎたてたりはしませんでした。

 なんとか車をガレージに入れ、ふーっと一息ついてから、ガレージ内に設けてある勝手口から店に入ったその時、

「輝斗、お帰りーっ」
と、彼を迎えたのは、二條園の『喫茶コーナー』の1席に座っていた一人の老人でした。

「ただい . . . ま。 . . . ん?」
反射的に答えた彼ですが、出迎えてくれたこの人物にまったく見覚えがありません。
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