京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第八話 その3「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

 さてどうしたものかと村田くんは、布団を前にして、一人立ちつくしておりました。
 そもそもアンドロイドである彼は、眠らなくてもいいように設計されていました。それに常に最適な状況に体内環境を設定されている村田くんにとって、布団は物理的に必要ないのです。
 しかし、消費エネルギー節約のため、主電源をカットし、パイロット動力のみを稼動させる『待機電源モード』に設定する事は可能で、その間にもともとインプットされている膨大な量の『知識データ』と、村田くんが実際に回収した『サンプルデータ』を組み合わせて、一種の『ストーリー』を無作為に作成し、マザーボードへ書き込む作業をする事も出来ます。この、人間でいうところの『夢を見る』プログラムは、二條京子が考案したものでした。
 今までの彼は、研究室の一角の椅子に座った状態でその作業をしていましたし、贅沢に個室をあてがわれた事も初めての経験でした。

 今日一日、いや、数時間を輝斗と一緒に過ごしてみて、一度言い出したらきかない『彼の頑固さ』を目の当たりにしましたし、言う事を素直に聞かない時には『機嫌を損ねる』傾向も感じとっていました。今日のところは彼と、二條家の人達のせっかくの好意に甘える事がベストだと判断し、布団の横に置いてあった糊のきいた浴衣を手に取りました。さっそく広げて袖を通してはみたものの、さすがに長身の体型には短いようでしたが、とりあえず帯をぐるっと巻いてちょうちょ結びにして、電気を消して布団に入ってみました。
 
 初めて布団というものに横になってみた村田くんですが、いつもの椅子とちがってこれはこれで気持ちがいいものでした。『ふぁ~っ、ふとんて、あったかいモンなんやなぁ...。節電にもなりそやし...。これはクセになるかもしれへんなぁ...。ふーっ、そやけど船長は、想像してた通りの人やったなぁ。
僕のこと人間とおんなしよーに扱こーてくれはる...』
 
 彼は、今日初めて出会った輝斗とその家族の事を、自身のマザーボードに書き込むために村田君は新しい分類コードを作成しました。それは今までには無かった『家族』というコードでした。
 この夜、そのフォルダには、村田くんと二條家の人々とのほのぼのとした楽しい夢が、めいっぱいに書き込まれていったのでした。
 もちろん、当の本人は知りようもありませんが、幸せそうな微笑みを浮かべて眠りに付く事も、彼にとって初めての経験でした。

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第一章・第八話 その2「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

「いえいえ、ボク布団はいらしまへんね。
椅子かなんか貸してもうたら、そこで休ましてもらいますし」
と、丁寧に断りました。
「何、遠慮してんにゃな、ちゃんと布団で寝なあかんで」
と、輝斗が言っても
「いえ、僕ホンマ、大丈夫なんですわ」
と、柔らかく返す村田くん。このあたりの丁寧な遠慮の仕方は、生粋の京女である二條京子のプログラムが影響しているのです。アンドロイドである彼は布団に横たわって寝る必要などないのですが、そんな事情を知らない輝斗は、
「アカンアカン。何言うてるんや」
と一歩も引きません。
「いえいえ、ボクなんかにそないに気ぃつこてもらうのは気の毒です。もったいない事ですわ」
「なんにも、もったいない事あらへんて。遠慮したらアカンで」
 
 酔っぱらいの押し問答みたいな二人の会話に気付いたタクシーの運転手さんが割って入りました。
「ところでそちらのお兄さん。スポーツかなんか、したはりますのんか?」
不思議に思った輝斗が
「ハァ?...なんでそんな事聞かはりますねン?」
と、聞き返すと、
「いや~、そっちのお兄さんの方だけ、車体がエライ沈んでまっしゃろ?『おすもうさん』が乗らはった時みたいですわ。そやけど見た感じはスラーッとしたはるし...。体でも鍛えたはんのやろか?思いましてな」

そう言われてみれば確かに村田くんが座っている車の右側だけが極端にローダウンした状態で走行していたのです。驚いた輝斗が
「村田くん、自分、体重何キロあんにゃ」
と尋ねると
「体重ですか?へへっ、ボク、こー見えて、120キロほどありますねん」
と恥ずかしそうに答えました。
「120キロォ~?」
輝斗とタクシードライバーは大声を上げました。

身長は182cmとかなり高いのですが、もしスポーツ選手であったとしても『高跳び』や『棒高跳び』に違い無いと推測されそうな細身の体型は、どう見ても、せいぜい70キロくらいにしか見えません。

「なんしか体の中に組み込まれてる部品が重たいみたいで...」
と、輝斗に耳打ちし、頭をポリポリかいている仕草は、ますますもって人間くさいアンドロイドの村田くんですが、中身はずいぶん人とは違うようです。

 ほどなくしてタクシーは二條園に着きました。この後に及んでも、まだ遠慮している村田くんを、輝斗は『エエさかい、二階へ上がれ』と怒ったフリまでして、二階の一番奥の部屋に連れて行きました。そこには二條家で一番上等の来客用布団がひと組、敷いてありました。
「今日からここが自分の部屋や。なんでも好きに使てくれたらかまへんしな。ほな、明日また起こしにくるサカイ、それまでゆっくり休みや。」
と輝斗は言い残し、階下へ降りて行きました。

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第一章・第八話 その1「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

「ええ~? インド?」
「ははは、エエやろ~。今からカナダ行って『ナイアガラの滝』見てくるし。」
子供が自慢話でもしているような、父の声でした。この時輝斗は『二條園デバー』を北インドのサヘート・マへート上空に停止させ、電話をかけてきていたのです。
 しかし、父が『二條園デバー』で出発したのはたった今しがた。せいぜい10分か15分くらい前のことです。都々はまだ小学校一年生ですが、『インド』がおじいちゃん、おばあちゃんのいる『アメリカ』と同じように、遠い異国のことだという事は理解していました。

「え~お父ちゃんスコイわ~ ウチも連れて欲しかった~。」
「はははっ。都々は明日ガッコあるやろ?
また今度、休みのヒムに、ゆっくりつれたるサカイに...。」
「ホンマ? 約束してや」
「よっしゃ、約束しよー。
お父ちゃんも、ジキ帰るさかい、都々は寝とくんやで」
「うん、わかった。......うん。......うんうん、わかった。お母ちゃんにゆーとく」
「あっ。もしもし...お父ちゃん?もしもし?。もぉ~、カナンなぁ~。」

 自分の言いたい事だけを話して電話を切ってしまった父に、ちょっとあきれ顔の都々でしたが、受話器を置くと弥生の元へ駆け寄りました。
「お母ちゃん。お父ちゃん、村田くんの布団用意しといてて、ゆーたはった!」

 宇宙空間では超光速での走行が可能だという『二條園デバー』は、地球上でも光速に近いスピードで、自由自在に世界中の空を一瞬で飛び抜けることができる『ハーモナイズ・ダイナモ』とよばれる動力が使用されており、抵抗も揺れもほとんど感じる事の無い、この上なく快適な乗り物でした。
 京都からインドのサへート・マへート、アメリカのニューヨーク、カナダのトロント、最後にアラスカのフェアバンクスに立ち寄り京都に戻るという、ナイトクルージングを楽しんだ輝斗と村田くんでしたが、その所要時間はわずか一時間足らずの事でした。

 京都市内中心部にある『二條園』から出発した二人でしたが、帰りは京都の東山にある『東野宇宙開発研究所京都出張所』(通称『将軍塚宇宙センター』)内に『二條園デバー』を停泊させました。
同センターは、出発までの今後しばらくの期間、彼らのホームとなります。
 センターから「三つ葉マークのタクシー」に乗り、二條園への帰路についた二人は、車中で
「村田くん、今日はホンマおおきに。ものすごおもろかったわ。」
「そら良かったです」
「なんちゅーても、あのマンハッタンの夜景は一生忘れられへんで~」
「へぇ、そやけど、最後に行った北極のオーロラも迫力ありましたね」
「そやな。あれも綺麗やったなぁ...。 
ああそや。ウチ帰ったら、布団用意してっさかいに、今日はゆっくり休んでや」

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第一章・第七話 その5「え?しらんかったん?」ニューヨークまでじきどっせ

 輝斗は『ほ~っ、飛ぶんやのーて消えてしまうんやなぁ... はぁ、乗ってみたいモンやなぁ』と思いつつ、宇宙船が消えていった空を名残り惜しそうに見つめていると、後の人だかりから、
「きゃあー?」
「いやん、かっこいい!」
「お名前はなんとおっしゃるんですか?」
という若い女性の声が聞こえました。

 輝斗が、『むっふっふ...。さてはワシが船長と知って、もうファンがでけたみたいやな』と、とっておきの笑顔で黄色い歓声がした方を振り返ると、そこには高校生くらいの若い女の子達にぐるり囲まれて、ちょっと困惑しているような村田くんがいました。

『なんや、村田くんの事かいな...。ま、そらそやな...。』がっくりと肩を落としてしまった輝斗でしたが、女子高生の取り巻きをかき分け、輝斗の前に立った村田くんは、真直ぐに彼を見つめて言いました。

「さぁ、船長行きましょう。」
「ん?...さぁ行きましょうて、どこ行くんや」
「ふふふ。これから『二條園デバー』で、ナイトクルージングですよ」
「ふおぉっ!乗れるんか?
そらエエ、そらエエわ!
ワシ、ハヨ乗ってみたかったんや」
またしても輝斗の心の声を、いち早く察知したかのような、村田くんの提案に、輝斗はこれ以上はないというくらいにうれしそうな顔をして、手を差し出しました。
「これから、よろしゅうたのむわな」
「はい船長! こちらこそ、よろしゅうおたのもーします!」
と、村田くんも目をかがやかせて輝斗の手を取り、うっとりするほど美しい笑みを浮かべて答えたのでした。
 この時、さきほど村田くんを取り囲んでいた女の子たちからため息とも悲鳴ともつかぬ声がこぼれていたのは言うまでもありませんが、二人の耳には届きませんでした。この時二人は何も口に出しては言いませんでしたが、宇宙でのパートナーとして固い握手を交わしていたのです。

 その後、村田くんは、見物の群集に向かい
「みなさん、エライ遅までお騒がせしてすんまへんどしたなぁ。どーぞお引き取り下さい」
と、大きい声で呼び掛けましたが一向に人だかりは、その場をはなれようとしませんでした。ふぅ...と一息ため息をついた村田くんは、リストバンドを操作すると『二條園デバー』下部扉からビームが降りて来ました。
輝斗はミヤコと弥生、都々の3人に
「ほな、ちょっと行ってくるサカイに」
と言い残し、村田くんと共に『二條園デバー』から発せられるビームに吸い込まれていきました。機体は上昇した後、『金閣』と同じように心地よいハーモニー音を奏でながら、西の空へと消えてしまいました。

 それを見上げていた群集は、一人、また一人と、次第に帰り始め、ようやく二條園界隈はいつもの静けさを取り戻しました。

 残された家族の3人は『お父ちゃんらどこ行かはったんやろ?』と、しばらくあっという間に消えてしまった西の空を眺めていると、二條園の電話が鳴りだしました。こんな遅い時間にいったい誰からだろうとミヤコと弥生が考えている間に、都々が
「ウチが出る~。」
と走って店に戻り、「はい、もしもし~。」と嬉しそうに受話器を取ると

「あぁ~もしもし、ワシやワシ。都々か?」
「うん。お父ちゃん、今どこにいんのん?」
「ははは。今、お父ちゃんな、
インド来てんねん、インド。」

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