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京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第五話 その3「宇宙船でお茶の配達?」 はぁ~??????

 輝斗は『ああっ!』と小声を出し、ホログラム映像に映し出された村田くんと、ホログラムを映写している村田くんを、かわるがわるに見ました。

~映像はアナウンサーと研究所建物の3D映像に切り替わり、金髪のアナウンサーが再びリポートを始めました。~

「その『宇宙からメッセージ』は当初、何かのいたずらではないか?とも考えられ、綿密な調査が行われました。
 その結果『メッセージ』は当時、『東乃宇宙開発研究所』で開発されたばかりの、新素粒子を用いた特許申請直前の『新型モジュール』を利用し、さらなる改良を加えられた宇宙空間通信システムが使用されている事が判明しました。
 機密開発されたばかりのこのシステムが、極めて高いセキュリティーを誇るこの研究所内から漏えいしたとはとうてい考えられず、ましてや実際にこのシステムが使用された映像が送信されて来たということ事態、信じがたいことでしたが、さらに驚いたことに、そのメッセージが送信されたのは『西暦2077年』であると識別されました。
 つまり、2020年の当時に2077年の未来、しかも宇宙空間からメッセージが届いたというわけです。この予測不可能な事実に研究者たちは驚愕の色を隠せませんでした。」
 
 ~映像は研究所内の会議室とおぼしき部屋で、研究者たちが激しい議論が交わしているシーンに切り替わりましたが、アナウンサーの解説は続いています。~

「当時の研究所で開発中の宇宙空間通信システムは、アインシュタインの相対性理論『いかなるものも光速をこえられない』という論理に基づいたものでした。つまり、発信してから受信するまでに、一定の時間がかかる『既存遅延波理論』で構築されていたのです。
 しかしこの『2077年』という未来からの偶然の受信により、新型通信モジュールの新しい可能性を見い出した科学者集団に、大きな発想の転換と数々のヒントをもたらしたのでした。その後、未来から発信した電波を時間をさかのぼって過去で受信する『新先進波理論』を構築するに至ったのです。」

 ~映像は『遅延波』『先進波』の説明が図解で映し出されていました。~

「7年後の2027年、研究所ではこの概念をもとに通信速度が光の壁を超えるという技術を完成させ、例の『メッセージ』を、ほぼ完全な状態で受信する事が可能になりました。
次々に送られて来る『メッセージ』の内容を確認した研究所のCEOである東乃武士は、当時、京都出張所の所長を努めていた『二條京太郎』、通称『ドクトル二條』を開発リーダーに任命しました。大抜擢といえる大胆な人事でしたが、『ドクトル二條』は天才的メカクリエイターとしての才能を開花させ、世界各地から優秀な人材を集めてチームを結成し、映像に映し出されているものを模倣する形で、宇宙船、ロボット等のアイテムを開発製造し、期待以上の成果をあげたのです。」

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第一章・第五話 その2「宇宙船でお茶の配達?」 はぁ~??????

 輝斗には武士会長の言っていることがまったく理解できませんでした。
 2077年のこの時代、地球の周りを取り囲むように数々の『宇宙ステーション』が建設され、『太陽系』の近隣の星々への行き来はされるようにはなっておりましたが、『銀河系』へは、未だ誰一人として到達していないのは広く知られている周知の事実、小学生でも知っている事でした。
 武士会長の話は、世間一般の常識の範疇をはるかに超えていたのです。

 口を開けたまま、ぴくりとも動かない輝斗を見て、京太郎が
「はははっ、輝斗がなんのこっちゃわからんのもしょがあらへん。
ホナちょっと村田くん。『ホロ・プロ』で、例のプレゼン流したって」

「はい、ドクトル二條」

『はぁ?「ドクトル二條」て、お父ちゃんの事かいな?
またタイソな名前つけてもうて...。』
と、輝斗が内心あきれていたその横で、村田くんは右の懐から、タバコのボックスサイズの銀色の箱を取り出しスイッチを押しました。
 
 すると、その箱からひと筋の光がゆっくりと立ちのぼり、光の先が二條園の天井に届いた瞬間に四方に広がり、立方体を形作りました。言ってみれば、3m四方くらいのキラキラした光の箱が突如として店の中に現れたのです。このシステムは、『3Dホログラムプロジェクター』のプロトタイプで、市場にはまだ出回っていませんでした。

 そして、その立方体のスクリーンの中央に、モノクロの球体が浮かび上がった瞬間、輝斗の口から『ほぉ!』というため息がもれました。その鮮やかな3D映像は、輝斗にとってかなり新鮮に思えたようです。
 次に何が映し出されるのかと彼が期待をふくらませて見ていると、その球体に数字の1が浮かんできました。それはまるで大昔のハリウッド映画で流れるイントロダクションが立体になったようなもので、まもなく1・2・3・4と順に数字が映し出され、カウントが始まったのですが、最新鋭のマシンにしては、それはもう何とも古風なものでした。

♪ひー・ふー・みー・よー
   ピーーーーーー

 球体がゆっくりと半透明になり消えたかと思うと今度は軽快なサウンドロゴと共に、ニューヨークの研究所とおぼしき建物と、金髪のアナウンサーが現れ、英語でリポートし始めました。アナウンサーの音声のうえに後から日本語の解説が、音量を大きくしてアフレコされていました...。

「こちらは、『東乃宇宙開発研究所』です。ここでは、1977年の設立以来、宇宙開拓時代に先駆け、人類のための宇宙生活におけるあらゆる研究が行われてまいりました。ところが2020年のある日、『宇宙からメッセージ』が届いたのです。これがその映像です。」

 アナウンサーと研究所建物の3D映像から、当時宇宙から届いたという粗い粒子の平面映像に切り替わりました。

 その発信者は、何かの乗り物の中にいるようでしたが、始めの方の映像では画像の状態が悪く、顔がはっきりとは見えませんでした。やがて画像が徐々に鮮明に映しだされると、その作務衣のような濃紺の宇宙服を身に付け、何か重要な報告をしている様子の青年が、今輝斗の隣にいる村田くんである事がわかりました。

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第一章・第五話 その1 「宇宙船でお茶の配達ぅ?」はぁ~???

 突然みんなから『おめでとう』だの『おきばりやっしゃ』だの、祝いや励ましの言葉を掛けられ、輝斗がわけもわからないままに一種のパニック状態に陥っている時、二條園の店の入口の木戸が再びカラカラカラ...と音を立てて開きました。

「ただいま帰りました。
皆さん遠いところ、よーおこしやしとくれやす。
そやけどまぁ、カドはエライ人ですわ。」
「あぁ、くたびれた。
武士兄さんも、京子ねーちゃんもまぁ...、ごぶさたで...。
よーおこしやしとくれやしたなぁ。」
「お父ちゃんおかえり、ただいまっ。
うふっ...。なんや今日、ウチの前だけエライにぎやかで、祇園祭みたいえ」
と輝斗の妻・弥生と叔母のミヤコ、娘の都々の三人が帰って来ました。

 そういえば、輝斗が帰宅してから家族の姿が見えなかったようでしたが、あまりにも突然の父母や客人との再会で気付いていなかったようです。
 どうやらこの3人でどこかに出掛けていたようですが、この非常事態にいったい何をしていたんだとばかりに
「なんや、どこ行ってたんや?」
と輝斗が不機嫌そうに弥生に聞くと、

「さいぜん、ミヒルお義母さんが帰ってきゃはって、『ウチが留守番しとくさかい、行っといない』て、ゆーてくれはったし...。ちょっとおつかいに...」
と、手に提げていたふろしき包みを見せました。
 輝斗が顔にしわをよせ『そやからその包みはなんなんや?』と納得のいかない顔をすると、

「ふふふ。おこわ(赤飯)ですやん! 仕出し屋さんに、お膳頼みに行った後に、こーてきましたんえ、なんちゅーても今日は、おめでたい席やしねぇ、ホホホ...」と、答えました。

 輝斗がさらに深く顔にしわをよせ『そやからそのめでたい事っちゅーのはなんなんや?』という顔をしていると、叔父の武士会長が口を開きました。

「イヤイヤ、輝斗くん。事情を説明するのが遅くなって、ソーソーリーね。
君は、見事合格したのじゃよ。
さぁ、これからあの壮大な宇宙に旅立つのじゃ!」
と天を指差しました。
...といってもここは二條園の店の中、輝斗は顔をゆがめながら、指さされた天井を見つました。

「はぁ...? 合格ぅ? う、うちゅう? ウチューて、宇宙のうちゅう?」
「ザッツ ライト輝斗くん! 
ユーはもうあの『二條園デバー』をルッキンしたかね?」
「『二條園デバー』をルッキン...? ああっ! あの飛行機?」

輝斗はすっかり気が動転して二條園の上空に浮かんでいる例の飛行物体の事を、すっ~かり忘れていたのでした。

「OH!『二條園デバー』はユーノウね...。んじゃ、話は早い。
『二條園デバー』は宇宙船じゃ。
君はあれに乗って、地球大気圏を脱出。
それから、宇宙に停泊している我が社が誇る巨大宇宙船『ビッグポッド』とドッキ~ング、エァ~ンド、君は船長として『銀河』の星々に旅立つのじゃ~」と、思いっきり両手を広げました。

「はぁ??????」
輝斗の口はアゴがはずれんばかりに大きく開けられていました。

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第一章・第四話 その6「家族、そして村田くん」 みな、おかえりやす!

 20歳前後と見受けられるその青年は、かなりの長身で、二條園の古い木戸を上半身をかがめるようにして入って来ました。店の中に入ると、店内ををめずらしそうに見渡していました。その姿はまるでスーパーモデルかハリウッドスターのようでした。
 しかし、非のうち所がない完璧すぎるその容姿のせいか、なにか他の人とは全く違った印象を輝斗は受けました。どこがどうおかしいというわけではありません。特徴がないというのか、気配を感じないというのか...。どうにも釈然としない何かを感じていたのです。

 青年は自分にむけられている視線の先に輝斗を見つけ、一瞬驚いたような表情をした後に、うれしそうににっこりと満面の笑みを浮かべました。

 一方、笑顔で見つめられた輝斗は『んん...?はて、前に会うた事があったかいな?イヤイヤ、こんな子いっぺん見たら忘れへん...。京子おばちゃんの孫っちゅー訳でもなさそうやし...。』と考えていると、当の叔母・京子が青年の側へ来て、彼の背中にそっと手をあて、輝斗と青年の顔を交互に見ました。

「輝ちゃん、紹介するわ。この子な、『村田くん』てゆーね。」
「はぁ、村田くん...ほぉ~お。」
やはり聞き覚えのない名前でした。

 しかし、村田くんと紹介された青年は、目をらんらんと輝かせながら輝斗のもとに近寄ってきたかと思うと輝斗の右手を両手でギュッと握りしめ、
「船長!! どうぞ、よろしゅーおたのもーします!」
と上下に激しく揺さぶり始めました。

『せんちょー? 船長? 船長てなんや?』
いったい何を言っているんだろうと考えていると

「おめでとう、輝斗くん!」
「おめでとうさんどす、輝ちゃん。」
「輝斗、たのむで」
「船長さん! せーだいおきばりやっしゃ!」
 その場にいた伯父、叔母、父、母の全員が次々に言葉を発しました。

『おめでとうて...? 
何をきばるんや...??
なにを頼まれたんや...???
船長てなんや...????
ワシが船長なんか...?????』
 
 村田くんに手を激しく揺さぶられ続け、もうろうとしてきた輝斗の頭の中は、さらにハテナマークの洪水であふれんばかりでした。

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