京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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申し訳ございませんが...。

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再開のメドがたち次第「もっと!もっと!京ことば」ホームページにてお知らせ致します。
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第一章・第八話 その4「船長・輝斗の決心」輝ちゃんのエエように、おしやしたらよろし

 輝斗が一階の居間に戻ると、さきほどまでそこにいたミヤコの姿が見えません。
「あれ?おばちゃんは?」
と弥生に聞くと
「輝ちゃんに悪いけど、先にお風呂入らせてもらいますて...。」
と、小さな声で答えました。弥生の膝まくらで、都々はすやすや寝入っています。
「よー寝てるな」
「へぇ、今日は、よっぽど気ぃ張ってたんどっしゃろねぇ...。さっき『お父ちゃん、まだやろか』ゆーて、ひっついてきたと思たら『ねぶたいー』ゆーて、ゴロン...。」
「ふっ。そうか...。」

 輝斗は都々を抱えて二階の子供部屋へと運んで布団に寝かし、心地よさそうにすやすやと眠っているまな娘をしばらく見つめていました。こうしていつものように、安らかな寝顔を見ていると、急に現実に引き戻されたような気がしてきました。
 今日という非現実的な一日を振り返ってみると、今朝の一枚の注文書から始まった一連の騒動は、まるで夢の中の出来事のようでした。
『ワシが宇宙なんか行ってしもたら、家族はどーなんにゃろなぁ...』
 その長い長い一日が、終ろうとしている今、ようやくしみじみ考える時間ができたのでした。

 突然、『宇宙へ行け』と言われ、またその理由というのが『未来からの映像に映っているから』だなんて、自分の意志とは関係のないところで、勝手にすべてが決められてしまっているようで、ちょっとイヤな気分になってきたようです。
 また、本人の自覚はないようですが、今までずっと音沙汰のなかった両親・親戚から何も知らされないまま、急に言われたというのも反抗心を持った原因のひとつであることは、間違いなさそうです。
 
 しかし、あの宇宙空間から送られて来たという映像の中に、ものすごく楽しそうにしている自分の姿があったのも確かな事実なのでした。

「輝ちゃん。お先ぃどした。今日はお疲れさんどしたねぇ」
振り返ると、風呂上がりのミヤコが立っていました。輝斗は都々の部屋の扉をすぅ~と後ろ手に引き、廊下に出ました。
「なぁおばちゃん、ワシノワシがおらんでも、店、大丈夫やろか?」
「ふん...。そら、なんとでもなりまっしゃろ? 
輝ちゃんも、若いジブンには、ヨーお店ほったらかして、ぷいっと外国に行ったりしといやしたやん。」
すっかり忘れていた昔の事をふいに言われ、
「んぁ。...。あぁ、そういう時期もあったなぁ...ははは。」
と、照れ笑いを浮かべていました。

 輝斗の若かりし時代には、いろいろと面白い事がありそうですが、それについては、またいつか機会があればお話するといたしましょう...。

「あぁ、そやった! お店ゆーたかて、肝心の売りモン『お茶』がおへんがな! ぜ~んぶ、船長はんが宇宙へ持って行かはんにゃしぃ~」
「ん?...。くっくっくっ! あぁ、そや。そやったなぁ」
「来年まで、売るもんなんか、な~んにもあらしまへんやんか」
すぐそばで寝ている都々と奥にいる村田くんを起さないよう、二人は声をおさえてクスクスと笑い合いました。

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第一章・第一話 その4「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ~、ヒマやなぁ~

「なんやこれ? 壊れてんのちゃうか? サラやのに!」

 彼の言う『サラ』とは新品の事です。しかし、通信機はいたって正常に作動していました。
通常なら左右120℃の角度に開く大きな扇型の液晶画面に、通信相手の映像が映し出される仕組みなのですが、この場ではモニタに小さい文字が点滅しているだけだったのです。

 ~ただいま超光速移動中の為、通話ができなくなっております。後程おかけ直し頂くか、メッセージをお願い致します。~

その小さな文字を目を細めるようにしながら見つめていた輝斗ですが
「超光速...? 超光速て! 光の速度を超えるてか?
んなアホな。ここ、数の単位も漢字の使い方もまちごーとんな。
こらラチあかんわ」
 
 半信半疑の素振りを見せながらも心の中では『もしホンマやったら?』という淡い期待を抱いていた彼は、あきらめきれないようでもう一度発信したのですが、やはり先程と同じ文字が表示されるのみでした。

「やっぱアカンなぁ」
「なんえ? 輝ちゃん。やっぱりイタズラか?」
「さあ? どないなってんのやら。よーわかりまへんわ。」
 
 今度は落胆した様子を隠そうともせずに肩を落とした彼は、メッセージも残さずに通話を切りました。
それから、また先程と同じように暖簾越しに表通りを眺めながら、両手を上げ「ふぁあぁあぁ~~~」と、すっかり気の抜けたあくびをしかけたそのとき!

「ひやぁ~! ちょっとお父さん、お父さん!」

 そこへ輝斗の妻の『弥生』が、悲鳴にも似たカン高い声を上げながら、二人のもとへ駆け寄って来ました。手にはなにやらプリントアウトした書類らしきものを持っています。

「お父さん、お父さん! 今、銀行さんから連絡あったんやけど...。大変え!お店の口座に、もっ、ものっすごい大金が振り込まれたんやて。
イヤ、コレなんやろ? なぁ、お父さん」

 書類を持つ弥生の手はぶるぶると震えていました。その震えを押さえようとして、もう片方の手を添え輝斗に差し出しました。彼はすぐさま、なかば奪うようにして書類を手に取りました。
 それは確かに二條園と取引のある『京の信用金庫』の振込明細に間違いはありません。

振込人名義は、『ジョニーK/フロム・イーストコースト』
振り込み金額は560億7千万円。
 
今度は、輝斗の手と膝ががたがたと震えはじめたのでした。

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第一章・第一話 その3「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ~、ヒマやなぁ~

「えぇ~、
煎茶百。玉露五十。お抹茶が二十に、お番茶五百。ほんでグリーンティが百...。
ふーーーん...?
ミヤコおばちゃん、これのどこがどうイタズラやて言いますにゃ?」
と、先程の注文書を見て不思議そうに首をかしげてみせる輝斗。

「はぁ~。ウチかて最初はそう思いましたんやけど...。
そやけどその書いたぁ~る数量のあとの単位!
ヨウみとくなはいな。」
ミヤコは、ちょっと不服そうな顔をして、もう一度念を押すように言いました。

「んあぁ~? ん? んぁ~? 『t』て書いたぁーんなぁ。
ティー?『t』てなんや!」
「へぇ...。いつもの注文やったら『g(グラム)』どっしゃろ? ま、なんぼ多ても『kg(キロ)』どすなぁ。
...そやけど『t』ゆーたら『トン』の事と、ちがいまっしゃろか?」
「トン...? トンかいな?」
「へぇ・・・。千キロ単位の『トン』 」

『確かに...。』と疑問に思った彼は、決して大きいとはいえない目を皿のように見開いて、もう一度その注文書を、それこそ穴があくほどじっくりと見たのでした。
 
 いやはや、この注文書の『t』という単位が正しいのであれば、二條園創業三百余年はじまって以来の大量注文です。しかし、普段は多少の卸業をしているとはいいましても、あくまで小売り中心の商いですので、そんな山のような在庫など持ち合わせているわけがありません。はてさて困ったものです。

しかし、一体誰がそんな莫大な量のお茶を注文して来たのでしょうか?
考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく二人でありました。

「え~、発注元は...『ジョニーK/フロム・イーストコースト』?...。
なんじゃこら? 聞いた事あらへんなぁ?...。
ま、そやけど、いっぺん先方さんには連絡入れといたほうがヨサソやな。なんしか数の確認だけでもしとかんと、こっちカテ動きよーがあらへんサカイなぁ。」

そう言いながら、京都の電気街である『寺町通り』の電話ショップで先日購入してきたばかりの、自慢の「パノラマティック・扇フォン」を手に取り、ワンタッチ液晶扇面を開いて注文書の相手先番号を入力しました。これは、油小路通りに居を構える、十一代目・遠藤新兵衛氏が考案し、世界のグッディーデザイン金賞に輝いた空前のヒット商品でありました。

「え~。ピッポッパッ で パッピップッペッピッ っと...」

とりあえずイタズラでも何でも良いから、発注元にコンタクトを取ってみようと考えたようでした。このあたりは彼のポリシーで『実際に、しゃべってみんとわからへん』という自身の経験に基づいているようです。また、仮に単位が『kg』や『g』の間違いであったとしても、暇を持て余していたこの時期に、新規の注文は、結構有り難いと思ったのでしょう。

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第一章・第一話 その2「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ~、ヒマやなぁ~

♪しあやぶったか まつまん ごじょお♪

「あぁ~、ヒマやなぁ~。なんでこないにヒマなんやろなぁ...。」
 通り過ぎて行くそのドイツ製のロボット回収車を、とある老舗の店の中から暖簾ごしに眺め、なにやらブツブツと呟いている初老の男性がいました。

「去年はここまでヒドなかったんやけどなぁ~」
彼の名は二條輝斗、齢57歳。
古くから京都市内で宇治茶を扱う老舗「お茶処・二條園」の店主です。身長は162cmと小柄ではありますが、意外に引きしまった筋肉質な体つきをしています。しかし、一見したところ、頭髪も少々さびしい感じが漂っていて...。ま、ひとことで言ってしまえば、どこにでもいるような『普通のおじさん』です。

♪せったちゃらちゃら うおのたな♪

「は~っ、またブンブンか...。」
このブンブンというのは、京都におけるコガネ虫の別称ですが、そのトラックの見た目からつけられたのは明らかなようです。いつ誰が言い出したのかは、定かではありませんが...。

「あれ、最近よー走ってんなぁ。ほんでまたエライ繁盛してんにゃなぁ。
ふ~ん。あないして、皆がほかすようなもん、タダみたいな値ぇで引き取って、
悪いトコだけチョコチョコッと直して...タッカイタッカイ値ぇつけて、
外国に売りとばすんやサカイ!。ほんま、エエ商売やなぁ~」

♪ろくじょうさんてつ 通り過ぎ♪
♪ひっちょう越えれば はっくじょお♪

彼のブツブツは続きます...。

「昔に比べたら、キョービはお茶の仕入れが高ぅなってしもて!
ま、ワシらみたいなチッチャイとこは、ホンマどもならんわなぁ~」

♪じゅうじょお 東寺で 
「そやけど、ホンマこれから、どないしたらエエのやろなぁ...」

♪とどめさす♪
「まるたけえびす」の唄のフレーズが終ったその時、

「輝ちゃん、ちょっと! ちょっとこれ、見とくれやすぅ。」

 少し慌てたような声が、店の奥から聞こえてきました。声の主は、二條ミヤコ。彼女は輝斗の叔母にあたり、現在七十七歳ですが、まだまだいたって元気で、シャキシャキしています。カテキンなどの成分が多く含まれ、昔から健康食品として重宝されてきたお茶を毎日頻繁に飲んでいる効果でしょうか?
 生粋の京女である彼女は、ずいぶん年下の甥にあたる輝斗にさえ、お店の主として丁寧に接し、また親しみを込めた「京ことば」で続けます。
「なぁ、輝ちゃん。これ、この注文書、ちょっと見とぉくれやす。
まさか、こないぎょーさんノ、こないな量の注文...。
たぶんイタズラかなんかやと思いますにゃけど...。」

「んあぁ~?」
輝斗はミヤコの手から注文書を受け取り、おもむろに目を通しはじめました。

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