京都二條園2077

かぐや姫以来、初?の京都のSF小説。2077年を舞台にした京ことばによる奇想天外なストーリー。毎週火曜日更新!!はじめてお越し頂いた方は、「第一章・第一話 その1」からお楽しみ下さい。
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第一章・第四話 その1「家族、そして村田くん」 みな、おかえりやす!

 輝斗の父「京太郎」と母「ミヒル」の二人はアメリカ・ニューヨークに拠点を置く『東乃宇宙開発研究所』で、長年のアメリカ生活を送っておりました。
 三十数年ぶりに、突如として京都の実家である二條園に帰宅した父と母。すっかり年老いてしまった両親の姿を見て、息子の輝斗は遥か遠い昔の幼かった頃の出来事を思い起こしていました。

 宇宙開発研究所をはじめ、数々の企業を多角経営している世界的にも有名な『東乃グループ』。宇宙開発研究部門は、今からちょうど100年前の1977年頃に設立されました。
 以後、来るべき宇宙開拓時代に先駆け、人類の宇宙生活におけるあらゆる研究が行われていました。

 当時の1970年代は、地球寒冷化説が地球温暖化説よりも優勢にたっていた時代でしたが、どちらにせよ『異常気象』が地球におよぼす影響を懸念され始めた頃です。
 

 大財閥である『東乃家』と、一介の個人商店である『二條家』との関係は、今をさかのぼること68年前の2009年、輝斗の叔母にあたる「二條京子」(ミヤコ、京太郎の姉)が、「東乃武士」(東乃家長男)と結婚した事に端を発します。   
 『お茶処・二條園』の看板娘であった京子に、武士が一目惚れしてしまった事が二人のなれそめだということですが、まさに「東男と京女」といった所でしょう。但し、この場合の「東」とはイーストコースト。つまりアメリカの東海岸という解釈ですが...ふふふ。

 
 輝斗が7歳になった2027年。父、京太郎は、義兄となった東乃武士の推薦により、京都東山に位置する『東乃宇宙開発研究所京都出張所』である通称『将軍塚宇宙センター』の所長として就任し、多忙な日々を送っておりました。

 しかし時を同じくしてこの頃『東乃宇宙開発研究所ニューヨーク本部』では、ある異例のプロジェクトが開始されました。
 そこへ、世界中に数多くある出張所の所長でしかない京太郎が、なぜか新プロジェクト開発リーダーとしての特命を受けました。大抜擢の理由は明らかにされませんでしたが、幼少より理工系の道をひたすら歩んできた科学技術者としての優れた一面と、想像力が豊かなクリエイターとしての一面をあわせ持っている希少な人材であったからでしょう。が、実のところは、『生粋の京都人』という事も大きく関わっていたようです。
 いやはや、なぜに『生粋の京都人』である必要性があるのか、現段階ではまったくもって謎でありますが...。
 
 一旦引き受けてしまえば、以後しばらくは京都に帰って来れないような状況となるのは確実です。この春、小学生になったばかりの輝斗と妻のミヒルを連れてニューヨークへ行くことを京太郎は決意しました。

 二條家では、奥の間に家族全員が集い、家族会議が開かれました。
 その時代の二條家は、当時としては珍しい三世代が同居する大家族だったのです。

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第一章・第三話 その5「輝斗おかえり」て、どちらさんどす?

 さて、突然に帰宅した輝斗の両親...。

 父の二條京太郎が高校生だった21世紀初頭。
 かつて任天堂「wii」のオンライン・ゲームプレイヤーが2億人に達した頃に、名うての天才プレイヤーとして「ジョニーK」というハンドルネームを世界に轟かせていたのです。
 そして「イーストコースト」は、いわずもがな「アメリカ東海岸」。
 
「ジョニーKフロムイーストコースト」
 
 50数年前、京太郎が母と自分をなかば置きざりにするようなかたちで出向してしまった宇宙開発研究施設があるアメリカの東海岸...
 輝斗はようやくいままで苦労して解けなかった謎の真相がわかり、パズルの最後のピースがぴたっとはまったような爽快感を味わいました。

「もう〜。なんや、二人とも! 最初にひと言ゆーてくれたら良かったのに!」
「ふふん お前をびっくりさしたろ思てな ふがぁ〜っはっはっは」

 泣きながら喜ぶ息子を見て爆笑かつ豪快に笑う父、それをあたたかく見守る優しい母のまなざし...。一見したところおかしな光景ではありましたが、三人にとってのこの再会は、あまりにも長い時間を経てようやく実現したものでした。

「お父ちゃんも、お母ちゃんも。おかえり...。僕、長い事待ってたんやで」

 まぁ、何年離れていても、またいくつになってみても、親子は親子。父と母との再会を喜ぶあまり、込み上げてくる少年の頃の寂しかった思い出に、またもや涙する輝斗でありました。

ああ、良かった...。良かったね...輝ちゃん。

 しかしこの時点では、地球の未来を根底から変えてしまう「壮大なる宇宙への旅」に関する概要を、輝斗はまだ何も知らされていなかったのです。彼が「やっとできた!」と、思ったパズルは、これからあかされる一連の宇宙開発プロジェクトのごく一部分、単なる序章に過ぎないのでした。
 
 しかも喜びのあまり、二條園上空に浮かぶ例の『飛行物体』の事なんて、す〜っかり忘れてしまっている輝斗なのでありました。

 同じタイプの「超光速移動体」がもう一機。刻一刻と彼のもとに近付きつつある事も、つゆ知らず...。

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第一章・第三話 その4「輝斗おかえり」て、どちらさんどす? 

 輝斗が見知らぬ老紳士に向かって
「...。 どちらさんどしたんかいな...」
と言い終わらない内に

「輝ちゃん。会いたかった」
と、店の奥から老婦人が出て来て、輝斗をしっかりと抱きしめました。
 輝斗の背中に腕をまわし、彼の胸に顔をうずめて「輝ちゃ〜ん。輝ちゃ〜ん。」とくり返し輝斗の名をつぶやいているその声はくぐもってはいましたが、泣いているように聞こえました。

 とっさの出来事でしばらくの間、輝斗はどうしていいのかわからずに、されるがままにしていましたが、ハッと何かに気付いたようにその老婦人の両肩に手をおき、涙を浮かべている顔を覗き込みました。

「お、お母ちゃん? お母ちゃんか!」
「イヤ! もう輝ちゃん。 お母ちゃんに決まってるやんか。」
 少し落ち着いた様子の老婦人は涙を拭いてちょっと恥ずかしそうな照れ笑いを浮かべています。
ここ30数年来会っていない母の「ミヒル」でした。

 突然の毋との再会がうれしい反面、まだ信じられないといった表情の輝斗は、改めて、座っている老紳士に向かって、
「...っ ちゅー事は、もしかして...。お父ちゃんか?」
と聞きました。

「...。 なんやお前、気ぃ付かへんかったんかいなー。」
 母が家を出た30数年前よりさらに以前、かれこれ50数年もの歳月を経て帰宅した父「京太郎」は、ほくそえむような表情をうかべています。

「当たり前や。もう...。もう...。50年も、何の音沙汰も無しやったやないかぁ」

 輝斗にはこんな場面で笑っている父の心境が、全く理解できませんでしたが、母に抱きしめられた彼の目には、キラリと光るものが見えていました。
 しかし、そんな彼の気持ちをもてあそぶかのように、ニヤニヤしたままの京太郎は続けます。

「注文書に、ちゃーんと書いといたやろ?
ジョニーK/フロム・イーストコーストて...。」

「えっ...?」
 それを聞いた輝斗は目が点のようになりました。そして

「うぁあぁあぁあぁーーーーーー。お父ちゃんやったんか!」
 と叫び声に近い大声をあげたかと思うと、年がいもなく子供みたいに泣き出してしまいました。

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第一章・第三話 その3「輝斗おかえり」て、どちらさんどす?

 一人は二條園の向いに住んでいる「吉野さん」。
 今どきめずらしく日本髪を結った老婦人で、ずいぶんふくよかな体格をしています。またその顔には、人の良さがにじみ出ているようです。
「えらいすんまへんなぁ。ここ、ちょっと空けとくれやすな」
と、言葉使いもていねいに、やわらかく優しい声で周りの人々に、協力を求めています。

 もう一人は、二條園のハス向いに住んでいる「染井さん」。
 こちらは相当のこだわりでもあるのか、身に付けている物全てが『紫色』にコーディネートされ、特にその「マむらさきの髪」がなんとも印象的な、ほっそりとした体形の老婦人です。なかなかにするどい眼光をメガネの奥から覗かせ、
「ほれ!ここの御主人通らはっサカイ、ちょっと道あけて! 
 ほれ、みな道あけとぉくれやっしゃ。ほれほれ!」
と、こちらは、まるでドラ猫のようなしゃがれた声で、有無を言わさないような迫力ある指揮をとっています。

 お互い見た目は対照的ですが、実は大の仲良しで近所の住人からは『おみきどっくり』と呼ばれています。二條園の『喫茶コーナー』に、ほぼ毎日お茶を飲みに来てはお喋りを楽しんでおり、二人と輝斗はお互いのことを何でも知っている間柄です。この二人の呼び掛けで、人込みはどよめきながらも、なんとか車が一台通るだけの隙間ができました。
 輝斗はその間を「おおきに、すんまへんなぁ」「エライすんまへんなぁ」と群衆にむかっていちいち声をかけながら、ゆっくりと自宅のガレージに進んで行きます。

『はぁ〜、ナンギなこっちゃなぁ〜』と、心の中でつぶやきながら。

 さて、上空のその物体に『お茶処・二條園』の文字があるからには、この騒ぎが、自分に関与しているという点については、まず疑いようがありません。
 本来ならその非常事態に、動揺しパニックになってしまうような状況でしょうが、その姿はいたって落ち着いているようでした。
 
 何があろうとも『慌てず、騒がず』。
 京の老舗に生まれ育った彼の取るべき行動がこの場面にも自然と出て来たのでしょう。普段と変わらないその態度を目にして、集まっている人々も決して騒ぎたてたりはしませんでした。

 なんとか車をガレージに入れ、ふーっと一息ついてから、ガレージ内に設けてある勝手口から店に入ったその時、

「輝斗、お帰りーっ」
と、彼を迎えたのは、二條園の『喫茶コーナー』の1席に座っていた一人の老人でした。

「ただい . . . ま。 . . . ん?」
反射的に答えた彼ですが、出迎えてくれたこの人物にまったく見覚えがありません。

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第一章・第三話 その2「輝斗おかえり」て、どちらさんどす?

『さぁ...、店帰ってからがまた大変や。色々と、せんなんしなぁ〜』
などと考えている内に、輝斗の車は二條園のすぐ近くにまで差し掛かりました。と、その時、急に彼はブレーキを踏み込んで停車し、辺りをキョロキョロと見渡しました。  
 なぜならあまりにも多くの人々が店の前を埋め尽くしていたので、一瞬道を間違えてしまったのかと錯覚してしまったようです。

「なんや!? なんの騒ぎや。皆、ワシの店の前で何してんにゃ?」
 ざっと二〜三百人にはなろうかという人だかりが、二條園の前に出来ていたのです。
 しかもそのほとんど全員が、空を見上げて指をさしているのでした。輝斗も皆が指さす空中をフロントガラスごしに覗き見てみると...。

「なんやアレ! なんであんなもん、宙に浮いてんにゃ?」

ふぅ〜。
驚いたことにそこにはなんと!およそ3世代程前のデザインと思われる水色がかったシルバーのジェット機のような物体が、微動だにせず空中停止していたのです。
 しかもほんの10〜20m上空という至近距離...。二條園の屋根にのぼれば、簡単に手が届きそうな所にポツンと浮かんでいました。レトロな機体の曲線は、どこか懐かしさを感じさせるシルエットを描いていますが、エンジン音らしきものは、一切聞こえてきません。
 それどころか、聞こえてきたのは、昼間かすかに聞こえたあの不思議な『メジャー和音』だったのです。
 しかも、両翼には『お茶処二條園』という文字が見てとれました。

「はぁ? なんでやねン! なんでウチの店の名前が書いてあんねン?!」
 
 今日という長い一日にやっと一段落がついて、これからゆっくり風呂にでも浸かり、その後、発泡酒でも飲んでのんびり休もうと考えていた彼ですが、まだまだそんな時間が持てるのは先の事になりそうでした。
 しかし、とにかく今は、事の真相を確かめるためにも、一刻も早く店に帰らなければなりません。

プーッ、プーーーッ
遠慮がちにクラクションを鳴らし、車窓から顔を出した彼は、
「ちょ、ちょっとすんまへんなぁ。ちょっと通しとくりゃす。」
人だかりに向かって申し訳無さそうに声をかけています。
と、そこへ

「あっ!輝ちゃん! あんたどこ行ったはったん?」 
「さいぜんからエライことになってまっせ。」
輝斗の姿に気付いた近所の顔見知りの二人が声を掛けてきました。

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第一章・第三話 その1「輝斗おかえり」て、どちらさんどす?

♪まるたけえびすに おしおいけ♪  
♪あねさんろっかく たこにしき♪  

 意外にも輝斗がハミングしていたのは、日頃あまり良くは思っていない、例の『昆虫型ロボット回収車・ブンブン』が流している『まるたけえびす』の唄でした。今の輝斗はまさに上機嫌そのもの、よっぽど気分がいいようです。
 ただいま彼は上林邸を始め宇治周辺数十軒の同業仲間と、京都市内の何十件かを訪ね終わり、二條園へ帰る道中でした。

「いや〜。やっぱり皆、話のわかるエエ人ばっかりやなぁ〜」
 行く先々で、その現実離れした話を、やもすれば「カクカクシカジカで〜」というような、極めて短時間の内に説明して回ったのですが、すぐにこちらの窮状を察し、普段から仲良くおつきあいをしている同業者はもちろん、軽く挨拶を交わす程度で深い付き合いもなく、ややもすれば素っ気無い態度を取っている同業者ですら、協力する事を快く約束してくれました。
 『困った時はお互い様』の精神が、こんな時代にも京都には残っている事実に、心から感謝する輝斗でありました。

♪しあやぶったか まつまん ごじょぉ...
 こころなしか鼻歌が少しトーンダウンしたようです。

「あぁ〜、そやけど今回のコレ、そないに儲かる仕事やないねんなぁ...。
560億7千万円売り上げても、儲けはチョビットしかあらへんにゃサカイなぁ。」
 ポロッと、口をついて出た本音でありました。

 お茶の卸しを引き受けてくれた同業の仲間達ではありましたが、この時期に在庫のほぼ全量を二條園に卸してしまえば、次の収穫期までの2〜3ヶ月は商品が無くなってしまい、商売が成り立たなくなってしまうのです。
 しかも京都での商いの基本は、売り上げ金額云々というよりも、大切な顧客への信用をなにより大事としておりますので、今回の取り引きは、各商店にとっていささか迷惑な話でありました。
 輝斗は、そんな事情を重々承知していましたので、せめて各店の一般販売価格(上代)での買取りを提案して、交渉にあたったのでした。
 しかし、その点については、ほとんどの友人たちが『そんなんでは商売にならへんやないか?』と、逆に心配してくれたのです。
 
♪せったちゃらちゃら うおのたな♪
♪ろくじょうさんてつ 通り過ぎ♪ 
 トーンダウンしていた歌声が、いつのまにやら大きくなってきました。

「まぁ、ブツブツゆーてても、しょがないわなぁ〜 皆が値引きしてくれはったサカイ、ちょこっとでも利益が出んにゃし、ありがたいこっちゃと思わなアカンなぁ...。」

 実際、ざっと勘定してみたところ、保管や物流にかかる費用、通信費に交通費、税金など、さまざまにかかってくる経費を差し引いてしまえば、たった数十万円足らずの純利益しか残らない計算になってしまうのです。
『560億7千万円』という驚異的な売り上げの影には、驚くべき利益率の悪さが隠されていたのでした。さきほど友人たちが口々に発した『骨折り損やで』という言葉が、心にしみ入る輝斗でありました。
 
 世の中、そうそう「うまい話」は転がっていないものですね。ふふふ。

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第一章・第二話 その4「前ぶれーション」 なんぼなんでも!どこのどなたはんどっしゃろ?

 同じ頃、京都新高速に乗り、上林家を目指し宇治に向かって車を飛ばしていた輝斗もまた、車の中から同じ現象を見ていたのでした。
「.....。今のは、なんやったんや?
銀色のアレは...。なんやったんや?」

 子供の頃から視力にだけは自信を持っている輝斗の目には、瞬時に西の空に消えて行った雲の切れ目の先端に、銀色に輝く星のようなものが見えていたのです。これは彼の家族はおろか、輝斗以外の他の誰の目にも確認されなかった物体でした。

 しばし今の現象について考え込んでいた様子の輝斗でしたが、京都新高速を降り、宇治川沿いの道に差し掛かった時に、見なれた『平等院まで3キロ』という標識を見つけ、今おかれている現状を思いおこしたようでした。
「はぁ〜、そやけど今回のこれ、皆に上手いこと説明できんのやろか?」
なんとか集められたとしても、デリケートなお茶の事です。今度は、保管場所の確保や保存方法、加えて輸送手段の問題もでてきそうでした。またしても不安な気持ちがふつふつとわいてきたようです。

「あかんあかん! まずはお茶を集めるこっちゃ...。」
せっかく二條園を出た時には、前向きな気持ちに切り替わっていたはずなのに、彼にとって、あまりにも荷の重い今回の事を、たったひとりで考えていますと、また、ブツブツと悪いクセがでてきてしまったようです。
 
 先程の現象は、のちに二條家の人々には大切な『思い出』となり『前ぶれ』と呼べるものになりましたが、世間一般では目撃者が大変少なかったうえ、写真などの投稿もなかったためか、ほとんど語られることはありませんでした。
なぜなら、その夜のニュースでは、これから京都を舞台に展開する、世界をあっと驚かせる『ある計画』が発表され、そのスケールの大きさに、今日のちっぽけな出来事はかき消されてしまったのです。
 
 さて、一体これからどう展開して行くのでしょう。

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第一章・第二話 その3「前ぶれーション」 なんぼなんでも!どこのどなたはんどっしゃろ?

 ふだんの二條園における商いの心配事といえば、毎月の注文、売上げが少ない場合や、卸先からの予定していた入金がない場合などですが、今回のケースは、大量注文の一括大口売上げ。しかも納品前に先払いの入金済み。
 本来ならうれしい悲鳴が上がるはずなのですが、なにせ、今まで取り扱った事も無いお茶の量をどう確保するかという問題が先行して、逆に窮地に追いやられてしまったような状態です。
 
 輝斗の乗ったバンを見送っていたミヤコと弥生は消え入りそうな小声で話をしていました。
「そやけど弥生ちゃん...、今回のことは、ウチほんま心配やわ。」
「ミヤコおばちゃんもどすか?...。」
二人とも、仕事に対しては異常なまでに責任感の強い輝斗を知っているだけに、心の底から案じていたからです。
 
 と、その直後の事です。
どこからか、柔らかくて透通るような調べが聞こえて来たのです。
 それは今まで聞いた事もない、珠玉のオペラハーモニーのような、なんとも心地良く空気を震わす『メジャー和音』でした。またそれは、遠い空から聞こえて来るようでした。

「や、弥生ちゃん! あれ、あれ」
ミヤコは思わず弥生に抱きつきました。ミヤコが指差す東山方面の空を見上げた弥生も
「へ? ひゃ〜〜〜〜〜〜〜!」
声にならない悲鳴をあげミヤコに抱きつきました。

 東山方面の空は、雲が上下に真二つに切れ、その雲の切れ目からはキラキラと七色にも輝く太陽の光が差し込み揺れていたのです。またその不思議な光のカーテン?ともいうべきものは、瞬きをするほどのほんのわずかの間に二人の頭上を超え、さらに西の方角に伸びていきました。そして、オーロラのような尾を残しながら直線を描き、最後は西山へと消えていきました。
 東の空を振り返ってみても光のカーテンは、すでに跡形もなく、さきほどまで聞こえていたはずの『メジャー和音』もいつのまにか消えておりました。もう一度、西の上空を見渡してみても、やはりいつもと同じ穏やかな京都の空が広がっているだけでした。

 いったい今のは何だったのでしょうか?。あの上空から聞こえてきた美しい旋律、そしてその直後の光の芸術ともいうべき空中現象。
しばらく二人は抱き合ったまま、じっと空を見上げておりました。

「お母ちゃん、ミヤコおばちゃん。今のン見た?」 
そこへランドセルをしょった小学生の女の子が息せき切って、駆け寄ってきました。
 輝斗と弥生の一人娘『都々(トト)』です。
学校の帰り道、彼女も一生忘れないであろう、不思議な光景を目撃したのです。

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第一章・第二話 その2「前ぶれーション」 なんぼなんでも!どこのどなたはんどっしゃろ?

「あ〜もしもし、上林さんどすか...?
いやぁ〜、いつもお世話になってます二條どす。せんだってはエライすんまへんどしたなぁ。 ・・・ いえいえ何を言わはりますやら。
こっちこそ気ぃ使こてもうて。へぇ?・・・ ハハハッ いえいえ!
ところで上林さん、今日は、ちょっと相談に乗って頂きたい事がおしてなぁ。 
へぇ。まぁ、電話で済ますのもなんどすサカイに、あとで寄してもーてもかましまへんやろか? ・・・ハァ。へぇ、 あぁ、そら、おおきに。ホナまた、のちほど。」

ガチャッ。チ〜ン。カチャ カチャ カチャ・・・

「あ〜おおきに、垣口さんどすか?いやぁ〜、いつもお世話になってます二條どす。
ハハハ・・・こないだはエライおおきに。 ・・・いやいやいや ・・・」
 
 輝斗は次々に心当たりの同業仲間に電話をかけていきました。
その横でミヤコと弥生は、小声で話しておりました。

「そやけど弥生ちゃん。今までいっぺんも取り引きさしてもうてへんのに、先にお金までキーッチリ振り込んでもろて。商売としてはありがたい話なんやけど...」
「そうどすな...。けどぉ〜商品があらへんいう事では、どもならしまへんしねぇ。
いやぁ〜、そやカテこんだけのお茶を、どないしたら集められるっちゅーにゃろねぇ。
おばちゃん、これがホンマの『無茶』いいますんやろかね〜
うふふ...」
 
 場をなごますのも京女の努め...とはいえ、実際にはそんな悠長な事を言っている場合ではありませんでした。
というのも、市場に流通しているお茶袋の最も大きいサイズ、いわゆる大袋でも一袋に二百グラムしか入りません。お茶一トンを大袋で換算すれば五千袋にもなります。
今回の『ジョニーK/フロム・イーストコースト』さんからの注文合計が770トンですから、先程の計算でいきますと、実に大袋で385万袋になります。
もっとわかりやすく考えれば『10トン』トラックで約八十台分。

 これから、お茶の収穫期を迎えるこの時期とはいえ、途方もないお茶の量であることには変わりありません。
いやはや、まさにこういうのを『無茶苦茶』と言うのでしょうか。ふふふ。

「あ〜おおきに、橋本さんですか?いつもお世話になってます二條どす。
ハハハ・・・いやぁ〜、こないだはエライごっつぉになりまして。
いやいやいや・・・ほんにきずつないこっとしたわ・・・
ところで、今日はちょっと折り入った話がありましてな、ハァ。へぇ・・・ 
ほな、後でよしてもらます。はいはい、へぇ、ほな、おおきに」 ガチャッ。

「中井さんですか?いやぁ〜、ご無沙汰してます、輝斗です。ハハハ・・・
いやぁ〜、お母さん、おおきにおおきに。 ・・・いやいやいや ・・・」

 とまぁこんな調子で、輝斗はあっと言う間に同業の五十件ほどに電話をかけ、次々とアポを取っていきました。やはり、いざ!という時にモノを言うのは、日頃の付き合いと人望なのかもしれません。

「ホナわし、ちょっと出てくるわ。」
骨董品さながらの受話器を電話に戻した輝斗は二條園のロゴが入った、これまたちょっと古臭い時代遅れの型の配達バンに乗り出かけて行きました。

「お父ちゃん、おはようおかいりやすぅ」
「輝ちゃん、気ぃお付けやっしゃ」
弥生とミヤコは、二條園のバンが見えなくなるまで軒先きで見送っていました。

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第一章・第二話 その1「前ぶれーション」 なんぼなんでも!どこのどなたはんどっしゃろ?

「なんぼなんでも!
560億7千万円て、どこのどなたはんどっしゃろ?
ほんでコレ...。何のお金やろ? ウチ、なんや恐いわ。」
と、弥生は震える声で言いました。

560億7千万円...。

 この数字は、二條園創業以来の過去三百余年にわたる総売上を、はるかにしのぐ金額でした。しばらく3人は無言でその場に立ち尽くしていました。

「これ、ケタ間違うたはるんと違いまっしゃろか?」
ミヤコは、誤記説を言い出しました。

「ウチらしらんまに、事件かなんかに巻き込まれてしもたんとちゃうやろか?」
弥生は、事件説を言い出しました。
 
「そうや!
こらぁ、裏社会組織のマネーロンダリングや、そうに決まったるわ」
最後に当の主人である輝斗までもが、訳のわからない陰謀説を言い出す始末でありました。

 その後、三人は各々さまざまな可能性をひとしきり話しあいましたが、その内に思い付く事もなくなり、またしても無言になってしまいました。

 振込明細書を囲むように見ていた彼らが、最後に注目したのは、唯一の手がかりとなる振り込み名義人欄。そう、今まで全く聞いた事もない
『ジョニーK/フロム・イーストコースト』
という名前でした。

「ジョニー、ジョニーK...、ジョニーK/フロム・イーストコースト...」
しかしくりかえし口にしたところで、まったく見当もつきません。

 しばらく頭をひねり続けていた輝斗でしたが、突然何かを思い付いたかのように、注文商品の合計金額と振込金額が合っているかどうか計算をし始めました。
 その後、ガサガサとお店の在庫をチェックしてみたり、倉庫から出て来たと思ったら、急に頭を抱えて考え込んだりと、ずいぶん悩んでいる様子です。
 またそれからも、店内をウロウロして、小一時間ばかり落ち着かない状態が続きましたが、急に立ち止まり、目を瞑って黙って腕を組んでいたかと思うと、
次の瞬間!

「よっしゃ! まずは上林さんに電話や!」

 大きい声でそう叫ぶと、彼は例のパノラマティック・扇フォンではなく、骨董品さながらの古い電話器のほうを手に取り、江戸時代から続く宇治の老舗へつなぎました。

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第一章・第一話 その4「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ〜、ヒマやなぁ〜

「なんやこれ? 壊れてんのちゃうか? サラやのに!」

 彼の言う『サラ』とは新品の事です。しかし、通信機はいたって正常に作動していました。
通常なら左右120℃の角度に開く大きな扇型の液晶画面に、通信相手の映像が映し出される仕組みなのですが、この場ではモニタに小さい文字が点滅しているだけだったのです。

 〜ただいま超光速移動中の為、通話ができなくなっております。後程おかけ直し頂くか、メッセージをお願い致します。〜

その小さな文字を目を細めるようにしながら見つめていた輝斗ですが
「超光速...? 超光速て! 光の速度を超えるてか?
んなアホな。ここ、数の単位も漢字の使い方もまちごーとんな。
こらラチあかんわ」
 
 半信半疑の素振りを見せながらも心の中では『もしホンマやったら?』という淡い期待を抱いていた彼は、あきらめきれないようでもう一度発信したのですが、やはり先程と同じ文字が表示されるのみでした。

「やっぱアカンなぁ」
「なんえ? 輝ちゃん。やっぱりイタズラか?」
「さあ? どないなってんのやら。よーわかりまへんわ。」
 
 今度は落胆した様子を隠そうともせずに肩を落とした彼は、メッセージも残さずに通話を切りました。
それから、また先程と同じように暖簾越しに表通りを眺めながら、両手を上げ「ふぁあぁあぁ〜〜〜」と、すっかり気の抜けたあくびをしかけたそのとき!

「ひやぁ〜! ちょっとお父さん、お父さん!」

 そこへ輝斗の妻の『弥生』が、悲鳴にも似たカン高い声を上げながら、二人のもとへ駆け寄って来ました。手にはなにやらプリントアウトした書類らしきものを持っています。

「お父さん、お父さん! 今、銀行さんから連絡あったんやけど...。大変え!お店の口座に、もっ、ものっすごい大金が振り込まれたんやて。
イヤ、コレなんやろ? なぁ、お父さん」

 書類を持つ弥生の手はぶるぶると震えていました。その震えを押さえようとして、もう片方の手を添え輝斗に差し出しました。彼はすぐさま、なかば奪うようにして書類を手に取りました。
 それは確かに二條園と取引のある『京の信用金庫』の振込明細に間違いはありません。

振込人名義は、『ジョニーK/フロム・イーストコースト』
振り込み金額は560億7千万円。
 
今度は、輝斗の手と膝ががたがたと震えはじめたのでした。

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第一章・第一話 その3「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ〜、ヒマやなぁ〜

「えぇ〜、
煎茶百。玉露五十。お抹茶が二十に、お番茶五百。ほんでグリーンティが百...。
ふーーーん...?
ミヤコおばちゃん、これのどこがどうイタズラやて言いますにゃ?」
と、先程の注文書を見て不思議そうに首をかしげてみせる輝斗。

「はぁ〜。ウチかて最初はそう思いましたんやけど...。
そやけどその書いたぁ〜る数量のあとの単位!
ヨウみとくなはいな。」
ミヤコは、ちょっと不服そうな顔をして、もう一度念を押すように言いました。

「んあぁ〜? ん? んぁ〜? 『t』て書いたぁーんなぁ。
ティー?『t』てなんや!」
「へぇ...。いつもの注文やったら『g(グラム)』どっしゃろ? ま、なんぼ多ても『kg(キロ)』どすなぁ。
...そやけど『t』ゆーたら『トン』の事と、ちがいまっしゃろか?」
「トン...? トンかいな?」
「へぇ・・・。千キロ単位の『トン』 」

『確かに...。』と疑問に思った彼は、決して大きいとはいえない目を皿のように見開いて、もう一度その注文書を、それこそ穴があくほどじっくりと見たのでした。
 
 いやはや、この注文書の『t』という単位が正しいのであれば、二條園創業三百余年はじまって以来の大量注文です。しかし、普段は多少の卸業をしているとはいいましても、あくまで小売り中心の商いですので、そんな山のような在庫など持ち合わせているわけがありません。はてさて困ったものです。

しかし、一体誰がそんな莫大な量のお茶を注文して来たのでしょうか?
考えれば考えるほど、訳が分からなくなっていく二人でありました。

「え〜、発注元は...『ジョニーK/フロム・イーストコースト』?...。
なんじゃこら? 聞いた事あらへんなぁ?...。
ま、そやけど、いっぺん先方さんには連絡入れといたほうがヨサソやな。なんしか数の確認だけでもしとかんと、こっちカテ動きよーがあらへんサカイなぁ。」

そう言いながら、京都の電気街である『寺町通り』の電話ショップで先日購入してきたばかりの、自慢の「パノラマティック・扇フォン」を手に取り、ワンタッチ液晶扇面を開いて注文書の相手先番号を入力しました。これは、油小路通りに居を構える、十一代目・遠藤新兵衛氏が考案し、世界のグッディーデザイン金賞に輝いた空前のヒット商品でありました。

「え〜。ピッポッパッ で パッピップッペッピッ っと...」

とりあえずイタズラでも何でも良いから、発注元にコンタクトを取ってみようと考えたようでした。このあたりは彼のポリシーで『実際に、しゃべってみんとわからへん』という自身の経験に基づいているようです。また、仮に単位が『kg』や『g』の間違いであったとしても、暇を持て余していたこの時期に、新規の注文は、結構有り難いと思ったのでしょう。

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第一章・第一話 その2「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ〜、ヒマやなぁ〜

♪しあやぶったか まつまん ごじょお♪

「あぁ〜、ヒマやなぁ〜。なんでこないにヒマなんやろなぁ...。」
 通り過ぎて行くそのドイツ製のロボット回収車を、とある老舗の店の中から暖簾ごしに眺め、なにやらブツブツと呟いている初老の男性がいました。

「去年はここまでヒドなかったんやけどなぁ〜」
彼の名は二條輝斗、齢57歳。
古くから京都市内で宇治茶を扱う老舗「お茶処・二條園」の店主です。身長は162cmと小柄ではありますが、意外に引きしまった筋肉質な体つきをしています。しかし、一見したところ、頭髪も少々さびしい感じが漂っていて...。ま、ひとことで言ってしまえば、どこにでもいるような『普通のおじさん』です。

♪せったちゃらちゃら うおのたな♪

「は〜っ、またブンブンか...。」
このブンブンというのは、京都におけるコガネ虫の別称ですが、そのトラックの見た目からつけられたのは明らかなようです。いつ誰が言い出したのかは、定かではありませんが...。

「あれ、最近よー走ってんなぁ。ほんでまたエライ繁盛してんにゃなぁ。
ふ〜ん。あないして、皆がほかすようなもん、タダみたいな値ぇで引き取って、
悪いトコだけチョコチョコッと直して...タッカイタッカイ値ぇつけて、
外国に売りとばすんやサカイ!。ほんま、エエ商売やなぁ〜」

♪ろくじょうさんてつ 通り過ぎ♪
♪ひっちょう越えれば はっくじょお♪

彼のブツブツは続きます...。

「昔に比べたら、キョービはお茶の仕入れが高ぅなってしもて!
ま、ワシらみたいなチッチャイとこは、ホンマどもならんわなぁ〜」

♪じゅうじょお 東寺で 
「そやけど、ホンマこれから、どないしたらエエのやろなぁ...」

♪とどめさす♪
「まるたけえびす」の唄のフレーズが終ったその時、

「輝ちゃん、ちょっと! ちょっとこれ、見とくれやすぅ。」

 少し慌てたような声が、店の奥から聞こえてきました。声の主は、二條ミヤコ。彼女は輝斗の叔母にあたり、現在七十七歳ですが、まだまだいたって元気で、シャキシャキしています。カテキンなどの成分が多く含まれ、昔から健康食品として重宝されてきたお茶を毎日頻繁に飲んでいる効果でしょうか?
 生粋の京女である彼女は、ずいぶん年下の甥にあたる輝斗にさえ、お店の主として丁寧に接し、また親しみを込めた「京ことば」で続けます。
「なぁ、輝ちゃん。これ、この注文書、ちょっと見とぉくれやす。
まさか、こないぎょーさんノ、こないな量の注文...。
たぶんイタズラかなんかやと思いますにゃけど...。」

「んあぁ〜?」
輝斗はミヤコの手から注文書を受け取り、おもむろに目を通しはじめました。

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第一章・第一話 その1「京の静かな昼さがり」丸竹夷二押御池 あぁ〜、ヒマやなぁ〜

 時は2077年春、京の都。
 とある昼下がりのことでした...。

♪まるたけえびすに おしおいけ♪

 昔ながらの商家が並ぶ静かな露地に、お馴染みのわらべ唄が微かに流れていました。
 
 古き良き都の風情は、ハイテクノロジー全盛のこの時代にもしっかりと受け継がれていて、心地よく響き渡る「京の通り名唄」は、あたりの町並みに柔らかく溶け込んでいました。 
 しかし、その「まるたけえびす」の唄を鳴らしていたのは、これがなんとも目にも痛々しいほどの鮮やかなメタリックグリーンのトラックで、その極端に丸みを帯びたデザインは一目で昆虫をモデルにした事がわかります。
 最近この町内にも度々出没するこのトラックの正体は、もっぱら古くなった家庭用ロボットを収集しては自社でレストアし、アジアやアフリカ等の諸外国に転売している中古ロボットの回収業者の車でした。近頃流行りのこの昆虫型トラック...。子供達の間では、わりに人気者ではありましたが...。

♪あねさんろっかく たこにしき♪  
スピーカーからの音楽に、マイクアナウンスが重なります。

えーっご町内の皆さま〜。たいへんお騒がせしております〜、こちらは〜ロボット回収でお馴染みの〜「関西ロボット販売」でございます。ご家庭で〜ご不要になられましたぁ「おそうじロボット」「お料理ロボット」〜または犬型〜・猫型〜・ウサギ型〜の「ペットロボット」などはございませんでしょうかぁ?ございましたら〜、トイレットペーパー、電子クレジットポイントなどと〜交換させて頂いております〜。特にぃ、74年製後期モデル〜、ウサオちゃんタイプのパールホワイトは、即決高値にて買い取り中でございますぅ〜。ウサオちゃ〜ん、おへんか〜。ウサオちゃ〜ん、あらしまへんかぁ〜。

 ちょっと鼻声のアナウンスは若そうな男性の声で、語尾を長く伸ばす独特の節回しが印象的です。この時代の子供達にはずいぶん新鮮で面白く聞こえるらしく、「で、ございますぅ〜。」等と、口まねをしている姿も見かけられます。また、21世紀初頭に生まれたおじいちゃん・おばあちゃん世代には、昔ながらのちり紙交換・古紙回収車と同じ節回しが大変懐しく聞こえるようでした。

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